【刀剣乱舞】驚きの毎日を、弐【男主】

お仕えします、自身の罪 ページ39

僕は前田藤四郎です。

鶴丸様の作戦に従い、無事いち兄の

正気を取り戻すことには成功したのですが。

…やはり、現実は痛ましいものでした。

いち兄は僕たちの姿を認めて泣き崩れ、

すまないとずっと謝っていました。

僕は何がなんだか分からなかったのですが、

平野はその言葉に込められた意味が

痛いくらいに伝わっていたようです。

いち兄が泣き疲れて眠ってしまったあと、

平野が部屋から出てこっそりと

教えてくれました。

いち兄が大切な兄弟を守りきることが

できなかったこと。

全てを失い、刀としてのはたらきも

させてもらえずずっと苦しんでいたこと。

…いち兄がこんな状態になったのは、

僕の主君が関係していること。

僕は、知っていたつもりでたくさんの

出来事を見落としていたようです。

人間はそんな酷い仕打ちをしない、

か弱き守るべき者だと無意識のうちに

思っていたからでしょう。

改めてこの本丸の惨状を知らされ、

刀剣たちの状態を知らされました。

「僕に出来ることは、ないのでしょうか」

全ては僕の主君が起こした暴動だと

再認識した今、唯一主君に鍛刀された

僕が責任を持って事態を収拾しなくては。

けれど平野は、首を横に振りました。

それは必要ないとでも言うように。

「これは前田の主さまが起こした暴動。

前田が責任を感じる必要はないのですよ」

「ですが、主君のせいで彼らが

傷ついたのは事実です。それに…」

言ってもいいのか、一瞬迷いました。

今まで平野に面と向かって言ったことは

ないけれど、この本丸で知らずの間に

触れてはいけない話題になったけれど。

「僕が、僕さえ鍛刀されなければ。

平野はずっと、鶯丸様のお傍に

いれたはずです」

平野には、仲の良い刀剣がいました。

鶯丸様といって、平野が僕を隠す為に

屋根裏へ共に隠れている間、

平野は僕に鶯丸様のお話をたくさん

聞かせてくれました。

短刀たちが折れ、重い空気になった時も

鶯丸様の真似をして、笑わせてくれました。

それほどまでに、平野と鶯丸様は

仲が良かったのです。

…それなのに、僕が鍛刀されたせいで

平野と鶯丸様の仲は引き裂かれ、

主君の手により鶯丸様は折られてしまった。

「僕が全て、悪いのです。

僕さえ、僕さえ現れなければ。

主君の望む、刀剣であれば…!」

最悪の事態は、免れたはずなんです。

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