【刀剣乱舞】驚きの毎日を、弐【男主】

驚きの発狂率 ページ20

この持っている刀が、

もしかしなくても不動なのか。

意識を保っていられなくなると

刀の形状に戻るとは、驚きだねぇ。

「刀なら、ちゃんと持ってるぜ。

きみが般若のような顔で落とすなと

釘をさしていたからな、

落とすわけがないだろう?」

気持ち悪くて霞んでいた意識の中、

ただひたすらに青年の言葉を思いだし

強く握っていた刀。

鳴狐の話だとかなり弱っていたらしいが、

まさか不動だとは露知らず、

強く握り締めすぎた。

折れてなければいいが、と青年に

刀を渡すと、ホッとしたように

安堵の息を吐いた。

「黒鶴も鶴丸と似て危険な奴だから、

大丈夫かと危惧していたが…

最悪の事態にならずに済んで良かった」

「きみ、さすがにその言い草は

失礼だろう!? 鶴丸が泣くぞ!?」

刀を大事そうに優しく抱きとめる

その表情は慈愛に満ちたものなのに、

内容は毒を吐きまくっている。

鶴丸が聞けば泣くだろうと確信に近い

予想を口にしたが、青年は不思議そうに

首をかしげるだけだ。

「鶴丸が…? 冗談だろう。

あいつは何があっても泣かない刀だ」

俺の前ではぼろ泣きだったけどな!

鶴丸の名誉を守るためにあえて口に

出さないが、鶴丸は普通に泣くぞ。

恐らく強がっていたんだろうなぁと

鶴丸の健気さが分かったところで、

一期一振の声とは違う悲鳴が聞こえた。

「つる、黒鶴!! どこに、どこに消えた!?」

「あ、やべ」

三日月が前田と平野を引き連れ、

帰ってきたようだった。

が、俺がその場にはいないので

軽く発狂している状態にあるようだ。

この本丸の刀の発狂率な…?

「きみ、ここはどの部屋だ?」

名前が分からないので無難に『きみ』で

会話を進めているが、

そろそろ名前を知りたい。

青年はそんな俺の心中を察してか、

「へし切長谷部だ。長谷部で構わん。

ここは、手入れ部屋だ」

軽く自己紹介をしてくれた。

手入れ部屋というと、鶴丸の部屋の

近くだったかな。

俺は方向音痴ではないから、

一期一振の部屋までは迷うことなく

行けそうだ。

手入れ部屋を出る前に中を物色すると、

鉄やら水やらがゴロゴロ出てきた。

これが、鶴丸の言っていた資源か。

…ここで長谷部と不動の怪我を

治すのも、ひとつの手段か。

寝ている妖精らしきものを起こして、

身振り手振りで長谷部たちを

手入れしてくれるよう頼む。

身振り手振りでやったのは、何となくだ。

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