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トロトロのスープにふかふかのパンを浸し、何回か息を吹きかけてから口の中に放り込んだ。パンに染み込んだスープがじゅわっ……と染み出し、少し冷えた身体に熱が移っていく。それと同時に今日の疲れが溶けていくようで、皆一口食べた後はほう、と一息吐いていた。
「カボチャあっ……まぁい……!」
「言っておくけど、砂糖は一切使ってないからね! かぼちゃの甘味だけだよ!」
「優しい甘みと濃厚なスープが最っ高……! これにパンを浸して食べるの、反則でしょ!」
「くり抜いたカボチャの中身? これ」
あきつにいる全員に一杯ずつ配られるほどのスープを見て、スツーカが聞く。
「そんなワケ無いでしょ。食用の美味しいかぼちゃを使ってます! というか、貴方達がくり抜いたのは観賞用の品種。毒はないけど全然美味しくないの」
「でもボールドは食ってるぞ」
「えっ」
「美味ではない」と言われている観賞用のカボチャを平然として口に運んでいるのは、局地制圧用攻撃機のボールドだった。大変な悪食である彼はくり抜かれた中身をガジガジと噛み砕いて貪り食っていた。立っているだけでも腹を空かせる彼は、長時間の集中と力のいる掘削によって限界が来ていたのだろう。常人ではとても食べられないカボチャをガツガツと物凄い勢いで消費していく。彼の元に配られた器を見ると、カボチャスープはとっくに無くなっていた。
「……流石と言うべきか、とんだ早業だな」
「お腹壊したりしないんでしょうか?」
「ええと……毒はないそうですし、大丈夫なんじゃないでしょうか……」
10個以上あった大きなカボチャの中身は徐々にその嵩を減らしていき、他のヒコーキや職員達がスープを食べ終わるまでに姿を消してしまった。大量のカボチャを平らげたボールドはコップ一杯の水を一口で飲み干すと、一言「寝る」と言って宿舎に戻っていった。
「……あの量のカボチャは、一体どこへ消えているんだろうな」
「瞬間的にエネルギーへ変換されてるとか?」
「それじゃあすぐに餓死するだろ、四次元空間にでもなってるんじゃねーの」
「そっちの方が非現実的じゃないか?」
食べ終わった者から順に食器を片付けていき、今日の業務は終わり終わり、と空港から徐々に人間がいなくなっていく。器の洗浄で最後まで灯りの点いていた食堂もしばらくすると暗くなり、空港内は遂に飛行機だけの空間となった。
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作者名:梟煌 | 作者ホームページ:Twitterには生息しています
作成日時:2020年10月16日 21時