キミが好き ［桃］ − 1 −

024 佐久間side ページ24

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「ちゃんとハッピーエンドですから。」



そう言って微笑んで1粒の涙を流したA。




「その後、みんなはAは悪くない。
Aのせいじゃないって言ってくれたんですけど、
前宙をしてる時に、頭によぎったんです。
彼女の母親が泣き崩れながらも人殺 しと言ってる姿が。
そしたら私、着地失敗して頭打って気絶して、
気付いたら病院で…脳震とう起こしたみたいで
念の為入院しようって2日入院して…」


佐久間「……。」


「退院してスタジオ行ったんですけど……
私、踊れなくなってたんです。
ちゃんと音は聞こえてるのに、
全くリズムが入ってこない。
踊りたいのに身体が動かない、
振りは分かってるのに出てこない……。
もちろんショーのメインは降板。
少し休んだ方がいいって。
それからもう、スタジオに足を運ぶことは
出来ませんでした。」


佐久間「そ、っか…。」


「でも、由果やさっき居たみんなが、
しつこいくらいに誘ってくれて。
見るだけでいい。ダンスがどんなに最高なものか
忘れないでくれたらそれでいいって、
どん底から引っ張り出してくれて
みんなで足並み揃えて魅せるダンスは無理だけど……
あぁやって踊ることは出来るようになったんです。」


佐久間「うん。」


「で、ケジメをつけるって
最後に由果と出たダンスバトルが、
この前ラウールが言ってたやつです。
あれが由果と踊る最後のダンスでした。
まだたまに夢を見ます。人殺 しって
周りから冷たい目で見られる夢を。
でも、封印していた前宙を、
この前先輩方の前で久しぶりにやって、、
改めて思ったんです。私はダンスが好き。
周りの人達が、ダンスは最高なものだと
伝えてくれたおかげで今の私がある。
だから、やめたことに後悔はありません。」


佐久間「っ、」



そう言って涙を指で拭うAを
横からぎゅっと抱き締めた。



「えっ？」


佐久間「ありがと。」


「はい？」


佐久間「教えてくれて。
ダンスを好きなままでいてくれて。」


「ふふっ。」




俺には分からないけど、
ものすごく辛い出来事だったと思う。

そんな出来事を中学、まだガキの頃に味わうなんて……


いつも笑顔のAからは想像もつかなかった。

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