高嶺の花子と大怪盗２【黒羽快斗】 (ページ49)

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99, お見事②-1 ページ49

快斗side

ファンファンとうるさいパトカーと、俺達を明るく照らすヘリコプター。

  双方ものすごいスピードで逃走するバイクを追跡中。  ちなみに、  

「卑怯だぞキッドォォォォォ！！！飛んで帰らんかぁぁぁぁぁぁぁ！！！！」  

という中森警部の拡張された声もする。 

卑怯も何も、別に地上から帰っても良いだろ。

 俺は運転するAの後ろに乗っているだけなので、足を止めこの騒ぎを見物する人々に、“はーあい♡”と、ファンサービスをしてみる。

すると、うぉぉぉぉ！と、バイクに向かって雄叫びが上げる。

  その雄叫びの凄さについ笑ってしまう。

ああ、やばい。めちゃくちゃ楽しい。

   何が楽しいかって、いつもは1人の逃走劇が、今日はAと2人なのだ。もう嬉しくて楽しくて仕方がない。 

Aを巻き込んだ罪悪感も、泥棒としての負い目にも、今この時だけは目を瞑らせて欲しい。

 バイクが目的の大通りに出て、Aが徐々にスピードを上げる。

  法定速度はガン無視だ。そうしなければ逃げ切れないだろうし。  

ガンガンスピードを上げていくAに、パトカーや白バイがそれに負けじとついてくる。

  もうすぐだ。あと少し。Aの背中から緊張が伝わる。 

そりゃそうだ。  こんなスピードでバイクを走らせたことなどないだろうし、今からすることが成功するかはほぼ賭けだ。     

だからこそ、   

だからこそAに賭けてみたい。

思わず口角が上がる。

 日本一早いと言われるこの隼を、乗りこなすAが見てみたい。     

目的の交差点が見えてくる。

    風の抵抗を減らそうと、Aがより前傾姿勢をとる。俺もそれに合わせて前に体重を移す。    

あと15m。 Aがスピードを上げる。

     あと10m。 一段とスピードが上がる。     

あと、5m。      

ガッ！と、交差点を通り過ぎる直前で、Aがハンドルを右に切る。

建物に当たるスレスレで右に曲がるバイク。

  ドリフトと言うよりもほぼ力技。

  案の定パトカー達は、急すぎる右折にスピードを落とせず、そのまま大通りを突っ走っていく。そして、

「おのれキッドォォォォォォォ！！！」

    という中森警部の声が、ものすごい速さで遠ざかっていく。  