高嶺の花子と大怪盗２【黒羽快斗】 (ページ47)

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キッドの疑問に答える代わりに、少し緩めたスピードを上げ直し、人っ子一人いない路地に入って行く。

この路地は、1度入ると出られなくなることで有名だ。

迷路のように入り組んでいて、どこをどう進めば正解なのか、はたまた自分はどこから入ってきたのか、分からなくなるのがこの路地だ。

自慢では無いが、

いややはり自慢だが、バイク好きの土地勘には、他の人よりも目を見張るものがある、と勝手に思っている。

第一、この路地だって一度も迷ったことが無い。1度地図を見れば、割とどこでも辿り着くことが出来る。

右に左に、左に右にと路地をジグザグ走行。

これで遅れてやってきたパトカー達も、迂闊に追いかけられないだろう。

まぁ上のヘリからは私たちバイクは丸見えなので、このヘリ達を撒かなければ意味は無いが。

数分そうやってジグザグに進んで行くと、目的の場所が目の前に来る。

「それではー！御機嫌よーう♡」

後ろで快斗がヘリに向かって叫ぶ。

……多分聞こえてないと思う。

するとヘリに照らされていた周りが、フッと急に暗くなる。

そう、ここからは屋根がある。

この路地は、奥の奥まで行くと途中から屋根があるのだ。

逃走経路にはもってこいの場所。

今頃ヘリの中では、私達を追跡することが出来ず、てんやわんやだろう。

まぁ知ったこっちゃないが。

位置バレを防ぐために、少し移動してからバイクを停車させ、バイクから下りる。

そして“ぷはっ！”とヘルメットを外す。髪がバサッと落ちる。

「流石としか言いようがないぜ。俺一人だと、こんなに上手くいかなかった。」

キッドがバイクから下りながら褒めてくるので、

「……ちょっと楽しかった」

と、私はエヘっと笑う。

するとキッドが、

「犯罪者の素質あるな〜」

と、ニヤニヤと笑うので、彼のお尻を軽くゲシッと蹴る。

私に蹴られたことなどお構い無しに、キッドはバイクを己の白いマントで覆う。

そしてポンっと煙を出して車体の色を赤から黒に変えてしまった。

『どうやったの……』

私は目の前で起きたことに目を見張る。

「企業秘密♡」

キッドがニヤッと笑う。

「お次は可愛いお嬢さん？貴方の番ですよ？」

キッドが私の手をグイッと引っ張り、自分の方に引き寄せる。
そしてあの白いマントで私を覆う。

ポンっという音と共に白い煙が上がり、彼の手から開放される。