高嶺の花子と大怪盗２【黒羽快斗】 (ページ46)

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Aside

ファンファンとうるさいパトカーと、私達を明るく照らすヘリコプター。

双方ものすごいスピードで逃走するバイクを追跡中。

ちなみに、

「卑怯だぞキッドォォォォォ！！！飛んで帰らんかぁぁぁぁぁぁぁ！！！！」

という中森警部の拡張された声もする。

街ゆく人々は何事だとその場に足を止めるが、後ろに乗るキッドが、“はーあい♡”とファンサービスをしまくるので、うぉぉぉぉ！と、バイクに向かって雄叫びを上げる。

チラッと後ろのキッドをみると、すんごい笑顔でめちゃくちゃ楽しそう。

やめろ、緊張感を持て。

やっと目的の大通りに出たので、徐々にスピードを上げる。

法定速度何キロオーバーなんだろ、と不安になるが、逃げ切ることが最優先だ。

ガンガンスピードを上げていく私達に、パトカーや白バイがそれに負けじとついてくる。

もうすぐだ、あとちょっと。頬に汗が伝う。

こんなスピードで走らせたことなどないし、今からすることが成功するかはほぼ賭けだ。

だからこそ、

だからこそ意地でも成功させてやる。

日本一早いと言われるこの隼を、乗りこなして見せようじゃないか。

目的の交差点が見えてくる。

風の抵抗を少しでも減らしたくて、出来るだけ前にかがみ込むと、キッドもそれに合わせてくれる。

あと15m。
スピードを上げる。

あと10m。
スピードを上げる。

あと、5m。

ガッ！と、交差点を通り過ぎる直前でハンドルを右に切る。

建物に当たるスレスレで、右に曲がるバイク。

ドリフトと言うよりもほぼ力技。

案の定パトカー達は、急すぎる右折にスピードを落とせず、そのまま大通りを突っ走っていく。

「おのれキッドォォォォォォォ！！！」

という中森警部の声が、ものすごい速さで遠ざかっていく。

フッとつい笑みがこぼれた時、後ろから“あっはっは”と、とても楽しそうなキッドの笑い声がする。

キッドと言うよりもほぼ快斗だ。

『素出てるじゃん』

と、前を向いたままキッドに話しかけると、

「しょうがねぇだろ？実際めちゃくちゃ楽しいし。」

と返ってくる。

絶対いい笑顔なんだろうなと、顔を見なくても分かる。

あとは頭上のヘリを撒くだけだ。

『はっ、楽勝。』

「なんて？」

心の中で言ったつもりが、声に出ていたらしい。