高嶺の花子と大怪盗２【黒羽快斗】 (ページ39)

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89, 怪盗キッドの協力者①-1 ページ39

Aside

ガクッと首が下に揺れて覚醒する。

え、寝てた。

すごい私、立ったまま寝てた。

えっへへへと謎の笑いが起こる。

てか今何時だ、とスマホを見れば、23時56分。

スンッと真顔になる。

そして1度深呼吸。

あぶねぇぇぇ！まじであぶねぇ！！！

私起きれない人間だから、本当に起きれない人間だから。

快斗から合図がきたとしても、耳につけたこの頼りない無線で起きれる訳がない。

まぁ、あの怪盗キッドが無線に向かって〝起きろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ〟と叫ぶ絵面は少し笑えるが。

そろそろ準備しときますか〜と、壁に寄りかかった体を起こす。

準備と言ってもヘルメットを被るぐらいだ。

慣れた手つきで髪を一つにまとめ、その上からヘルメットを被る。

すると、美術館の方から歓声が聞こえた。おそらくキッドが群衆の前に現れたのだろう。

じゃあもうすぐ連絡も来るだろうと、バイクに跨りエンジンをかける。

ジジッジジッと、耳につけた無線からノイズ音が聞こえ、

〝「行けるか？」〟

という快斗の声。

『もちろん』

私は不敵に笑う。

コンコンとつま先で地面を叩く。

これは私の癖だ。

パパがバイクを乗る時にいつもしていた癖で、面白がって真似をしていたら私も癖になってしまった。

半クラッチの状態で、それが終わると同時に一気にブレーキを開放する。

バイクが急発進し、勢いよく路地裏から飛び出した。

急に現れた真っ赤な大型バイクに、街ゆく人が吃驚し足を止める。

法定速度は完全に無視だ。どうせ今から犯罪者を連れ去りに行くのだ。ここで律儀に守る気は無い。

威嚇するようにバイクを唸らせ、美術館へとバイクを走らせる。

美術館に近づくにつれ、聞こえる歓声が大きくなる。

相変わらずキッドはすごい人気だ。

グッと右にカーブして、大通に出る。

ここからは美術館まで一本道。

正面に見える美術館が、悠々と身構えている。

夜空で辺りが暗い分、美術館の周りだけが明るいこの光景は少し異様だった。

そして頭上にはたくさんのヘリ。

何台だっけ、15台？