高嶺の花子と大怪盗２【黒羽快斗】 (ページ36)

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86, 予告直前です②-2 ページ36

人混みをかき分けてこちらに向かってくる警官。これから我が身に、何が起こるかも知らないで。

そして丁度すれ違う時、

「おやすみ♡」

と、耳元で囁き警官の目の前で、シュッと、スプレー式の容器に入れた催眠ガスをひと吹き。

帽子を被り直す振りをして吹きかけたので、誰にも気づかれていないはず。

ぐらっと警官の体が傾き、横にいた俺の方に倒れてくる。

「ちょっと！大丈夫ですか？え？吐きそう？！！トイレまで我慢してください！」

と、よく響く声で言った後、気分の悪くなった警官をトイレまで連れていく、というていで移動する。

幸いトイレには誰もおらず、ひとつの個室に入りガチャっと鍵を閉める。

そして警官の制服を脱がせていく。

意識のない相手をトイレという個室に連れ込み服を脱がせる。

俺もよくお世話になる大人のビデオでは定番だが、今この状況では興奮もクソもない。

中年男性の服を脱がせて、なんの夢がある。そんな扉は開けるつもりねぇぞ。

警官から剥ぎ取った服に真顔で淡々と着替えていく。

警官には申し訳ないが、手足を縛り、口をガムテで固定し、個室の鍵をかけ監禁完了。

そして何食わぬ顔でトイレを後にする。

一般客が立ち入り禁止の美術館には、顔パスならぬ制服パスで、案外すんなりと入ることが出来た。

用意していた錯乱スプレーは必要なかったようだ。

ここからは警官だらけ。必然と気が引き締まる。

綺麗に一段一段並んで立つ、警官のいる階段を上っていくと

「おい！お前！！」

と、その中の一人に呼び止められる。

「……どうかしました？」

不思議そうな顔とは裏腹に、俺は内心ほくそ笑む。

「その背中！どうしたんだ！」

警官が俺の背中から何かを剥ぎ取る。

その何かとは、キッドカード。警官の服に着替えた時に、自分で貼り付けておいた。

「な、なんですかそれはー！」

驚いたフリをする。我ながらなんて白々しい。

「け、警部に知らせてきますっ！」

「ああ！」

その警官からキッドカードを受け取り、3階の展示室へと急ぐ。

展示室の場所は、中森警部につけた盗聴器で把握済みだ。

走りながら、建物の大体の造りと強度を確認する。

ある程度の無茶なら大丈夫そうだ。ワイヤー銃も、難なく使えるだろう。

逃走経路は〜？1、2、3、4。4つね。

やはり自分の目で確認することは大切だ。
事前に得ていた情報と、やや違うところも多少ある。