高嶺の花子と大怪盗２【黒羽快斗】 (ページ29)

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79, 緊張と緩和②-1 ページ29

快斗side

Aの運転する隼で、現場近くまで送ってもらう。

ここからは別行動だ。

俺が下見＆予告の実行をしている間、Aはここからもう少し現場に近い路地裏で待機。

今日の犯行は至ってシンプルだ。

偽予告のせいで、マジックショーをする準備も計画もない中での犯行。

今日はただ宝石を盗むだけでいい。

盗んだあとは、Aに無線で合図を出す。その合図にAこと、正体不明のバイクマンが現れ、キッドを乗せて逃亡。

することは簡単だが、実はかなり緊張している。おそらくAもだ。

俺のせいでAが逮捕。そんな未来考えたくもない。

「んじゃ行ってくる！」

と、黒い帽子を深くまでかぶり、紺色のシャツと黒色のズボン、指紋を残さないための手袋という、だいぶ不審者だがあまり目立たない格好で、Aに手を振る。

Aも手を振り返し、見送ってくれる。

同じくキッドの予告現場に向かう観客達に混じって歩き出す。

が、クルっと踵を返しAの方に急いで戻る。

まだ移動していないといいが。

急いでもどると、Aがパンっ！と頬を叩き気合いを入れ直していた。

戻ってきたことに全く気づいていないようだ。

横にたっても気づかない。え、すごい、気づかない。

「A！」

『んぁあ！』

横に立っていた俺を見て、Aが目をこれでもかと言うほど見開く。

『な、何？！』

と、心臓を押えてAが聞く。

「いや、緊張してるかなって」

『…………………』

Aが少し頬を赤くして、ぷいっと目をそらす。

何その反応。めっちゃ可愛い。

「可愛いお嬢さん、少し私の手にご注目」

Aの前にスっと手を出す。

「はぁ〜〜〜〜〜〜！」

気合を入れてみせる。

なんだなんだとAが真剣に見つめてくる。

そして、ポンッという音と共に煙を出し、1輪の赤い薔薇を出す。

『いや、いつもと一緒かい！』

Aがツッコミを入れる。

「でも緊張は解けただろ？」

と、にひっと笑って見せ、

「まだまだ、終わりじゃありませんよ？」

と、今度は赤い薔薇に

「はぁ〜〜〜〜〜〜！」

と、気合を入れ始める。

先程の期待の目とは程遠く、どうせ薔薇が消えるんだろ、と見つめるA。

甘いぜAちゃん。

ただ薔薇を出して消すために、わざわざ戻ってきたわけじゃない。