高嶺の花子と大怪盗２【黒羽快斗】 (ページ28)

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78, 緊張と緩和①-2 ページ28

「これは今日の報酬。本当は終わったあとに渡すつもりだったんだけどな。」

『か、快斗〜〜〜♡』

快斗が悪ノリして、バッと両手を広げてくる。ハグしようぜってことなのだろう。

んふふ♡と笑って断る。

快斗のおかげで緊張は解けたけど、別の意味で緊張しちゃう。

にこにこで諦めろと、快斗を見ていると

「A、」

と、名前を呼ばれる。

その目は真剣だ。

そしてスゥっと息を吸い込んで、口を開く。

「巻き込んじまって本当に悪いと思ってる。」

その声は少し震えていて、すぐに目をそらされる。

そこには自信満々で、余裕たっぷりの快斗はどこなもいなかった。

私は快斗をなんだと思っていたのだろう。

快斗だって人間だ。緊張しないわけが無い。怖くないわけが無い。

私が快斗の人生を、この夜に背負っているのと同じように、快斗も私の人生を背負っているのだ。

ましてや、いつも一人で犯行に及ぶ彼は、私という存在が増えて調子が狂うはずだ。

いつものように自信満々でいられるほど、快斗は強い人間じゃない。

ただそれをポーカーフェイスで隠しているだけなのだ。

『私ね、キッド大好きなの。しかもバイク大好きなの。』

脈絡のない私の言葉に、

「お、おう？」

と快斗が頷く。

『キッドのためならなんでも出来るし、バイク好きはね、日頃バイクのことしか考えてないから、事件事件の警察にバイクで負ける訳がないんだよ』

「………………………」

『キッド好きのバイク馬鹿なめんな？』

励ますつもりで言ったのだが、遠回しに言いすぎたらしい。あまり伝わっていないようだ。

あれー何も言わないなーと顔を覗き込もうとすると、グッと帽子を深くかぶられる。

そのまま快斗は私の手を取り、その手にバイクのガチャガチャを押し付ける。

そして、

「ごめん、今顔見られたくないから」

と、耳元で言われ、ポンッとお得意の姿くらましで消えてしまった。

顔みたかったなと思いながら手の中を見ると、ガチャガチャと一緒にクシャクシャな紙が私の手にあった。

その紙を開いみてると、〝ちょー元気でた〟と、走り書きしてある。

急いで書いたのか、いつもより雑だが、紛れもなく快斗の字だ。

というか、いつ書いたの。

私はその紙を左胸のポケットに大事にしまう。

元気が出たのは私もだ。大丈夫、今なら無敵な気がする。

フッと笑みを漏らし、ヘルメットを被る。

さぁ、本番はここからだ。