高嶺の花子と大怪盗２【黒羽快斗】 (ページ15)

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65, ポーカーフェイス①-1 ページ15

Aside

快斗の顎を急いでアイスノンで冷やし、何とか顎の腫れた怪盗キッドという悪夢を阻止できた。

「顎割れたかと思った」

と、涙目で言う快斗が可愛かったのは内緒。

100パー殴った私が悪いのに、涙目の快斗＝可愛い、という新たな方程式の発見で、全く反省が出来ない。

邪念抹殺に集中していると、

「そろそろ俺ん家行くか」

と、快斗が私の家から持ってきたアイスノンを返してきた。

その顔は、涙目どころかケロッとしていて、いつもの快斗だ。

『…………………』

「どうかしたか？」

『……ポーカーフェイスしてない？』

「へ？」

『痛いの我慢してない？』

快斗は自分の本心を、よくポーカーフェイスで隠す。

盗一さんの教えを律儀に守るのは立派だが、時にそれは、苦痛を1人で背負うことを強いる。

今日のように身体的痛みなら多少は気づけるが、悩みや心配事は気づけないことが多い。

全てをとは言わないが、そういうことは打ち明けて欲しい。

じっと見つめると、快斗がフッと優しく笑う。

「我慢してねーよ。てか、Aの前ではほとんどポーカーフェイスしてねぇから」

『ほとんど……』

「そう、ほとんど」

ほとんどって何だ。

『じゃあどんな時にポーカーフェイスしてるの？』

私の問いに、

「お前それ聞くか？」

と、快斗が呆れる。

分からないんだから、しょうがないじゃない。YESと頷く。

どうしようかと快斗が一瞬考えて、

「んー、こんな時とか？」

と、グッと私の手を引く。

わ、っと私は快斗に引き寄せられ、鼻と鼻が当たるほど快斗の顔が目の前に来る。

一瞬思考停止。

なぜこのような状況になったのか頭から抜け落ちるほど、この状況についていけない。

顔が熱くなるのが分かる。絶対、今、顔赤い。

掴まれた腕から熱が伝わってしまいそうで、とりあえず離れようと快斗の胸板を押すが、ビクともしない。