高嶺の花子と大怪盗２【黒羽快斗】 (ページ13)

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63, あゴッッッ！！！！②-2 ページ13

薄暗い駐車場で壁によりかかり、暇なのでスマホでキッドのニュースを調べる。

記事曰くミライラ美術館前では、予告時間まであと数時間もあるにもかかわらず、もう見物人で溢れているそうだ。

キッド本人ですらまだ準備してねーのに。

そういや今日は、名探偵は来るのだろうか。

鈴木財閥関係だから、高確率で来るのだろうが出来れば来て欲しくない。

キッドの仕事を邪魔してくるのはもちろん、今回はAが関わっているからだ。

お願いと強引に頼んだのは俺だが、本当はAを関わらせたくなどなかった。

危険なことに変わりはないし、犯罪の片棒を担ぐようなことはさせたくない。

1人悶々と考えていると、薄暗い駐車場が明るく照らされた。

眩しくて思わず目を瞑る。

寺井ちゃんの運転したトラックだ。

「坊っちゃま！お待たせしました」

寺井ちゃんが降りてきて言う。

そしてトラックからバイクを下ろす。

それを手伝い、

「わざわざありがとな」

と、お礼の言葉を述べると、寺井ちゃんが申し訳なさそうにこちらを見る。

「坊っちゃま、やはり今からでも私が迎えに……」

「気にすんなって！寺井ちゃんの友達の調子があんま良くないんだろ？こっちはこっちで何とかするから、早く行ってやれって」

「ですがAちゃんを巻き込むのは……坊っちゃまの大切な人なので……」

「だーいじょぶだって！俺もついてるし」

その言葉に、寺井ちゃんは申し訳なさそうに笑う。

本日、ミライラ美術館の周辺は、バスや電車などの交通機関の利用を制限される。

キッドの逃走経路を減らし、大多数の見物人による混乱を防ぐためらしい。

しかも予告時間後は、どの交通機関もキッドが確実に逃走したと分かるまで、運行見合わせときた。

羽を使って空を飛ぶことが出来ない今、美術館から家まで歩いて帰るには遠すぎる。

本来なら寺井ちゃんに迎えに来てもらうところだが、寺井ちゃんの、入院中である友人の様態があまり良くないらしい。

早く友人の元に駆けつけたいだろうに、キッドの作戦会議や準備を手伝ってくれただけで十分ありがたい。

こういう場合はキッドの仕事なんかより、寺井ちゃんの私情を優先して欲しい。

「くれぐれもお気をつけ下さい。」

「おう」

俺は寺井ちゃんに歯を見せて笑って見せる。

そして、トラックに乗り込み駐車場を出ていく寺井ちゃんを見送った。