7 彼女の事 ページ8
Aさんが口を開いた。
「心的、外傷後ストレス障害」
思考がフリーズした、脳の動きが止まった。
心的外傷後ストレス障害を俺は知っていた。
知っていなかったら良かったのだが医療関係の職に携わっていれば知らないでいることは不可能だった。
どれ程辛いものかは俺自身は体験した事が無いが、同僚の男性が事故に巻き込まれた後精神的におかしくなっていたのが記憶にずっとこびり付いてる。
心的外傷後ストレス障害は様々な理由でなりうるものだ。
事故にあったり、無理矢理襲われたりなど精神的身体的に酷く傷付いた場合に起こりやすい障害だ。フラッシュバックと共に酷い恐怖感に襲われてしまう。
かなり厄介なもので、事件から6ヶ月以内に症状が出始め、そこからは同僚の様に−。
「もし、大丈夫なら原因が知りたい、です...」
―
これは私が医者になったばかりの頃だった。
初めて診察を受け持ったのは、ツインテールをした小さな女の子だった。
でも、そんな小さな子には抱えきれない程の大きな病が背後には居たの。
私が初めて診察した子は、急性白血病だった。
余命もそう長くはなかった。
私が懸命に治そうとしても、そう簡単にはいかなかった。
そしてある日、急にその子の病状が変わったの。
即手術室行きよ、なんとか一命を取り留めた。けどその日からその子は私の担当じゃなくなった。
何でか、理由は分かりきっていた。
私はあの子の青紫に染まっていく顔を見て、激しい呼吸音が耳に入って、死にそうな顔でもがき苦しむ彼女を見たのに立ち尽くすだけだったからだ。
あの時の、女の子の顔が忘れられない。
夢に毎日のように出てくるの、呪ってやる殺してやるって。
−
「それから私の身体はおかしくなった。
誰かが亡くなったって聞いたら、考えたら、想像したら全て私のせいだって思うようになってね。
そこからは精神科にずっと通院よ、医者が。
笑っちゃうわよね」
言いたかった、「そんなに思い詰めないで」 と。
だがそんな勇気、小心者の俺には無かった。
ただ、笑っちゃうわよねと言葉を吐きながらポロポロと涙を流すAさんの背中を摩る事しか出来なかった。
Aさんの嗚咽混じりの泣き声が病室に響いた。
でも、Aさんが抱えている障害を知っても俺の好きという気持ちは無くならなかった。
寧ろ、俺に出来る事があるならしたい。
もし俺が彼女に一目惚れをしていなければ、きっと無視をしていただろう。
今だけは、俺に感謝した。
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走るプリン(プロフ) - のん民さん» 変えておきました,教えて頂き有難う御座いました! (2019年3月15日 7時) (レス) id: 83f0796dfa (このIDを非表示/違反報告)
走るプリン(プロフ) - のん民さん» 読んで頂き有難う御座います.少し特殊な矢印を使っていたのでもしかすると文字化けして見える方が居るのかも知れません。 (2019年3月15日 7時) (レス) id: 83f0796dfa (このIDを非表示/違反報告)
のん民(プロフ) - ちなみに私はパソコンで見てるので、もしかしたらスマホやiPad、DSなどで見てる方は大丈夫かもしれないです、そこら辺はよく分からないですが(⌒-⌒; ) (2019年3月15日 3時) (レス) id: 8246ba9fb8 (このIDを非表示/違反報告)
のん民(プロフ) - 面白そうです、お気に入り登録しました、更新頑張ってください。 それからひとつ、ページ1自己紹介のところなのですが名前や齢の後の、おそらく記号なのでしょうか?その部分が文字化けしています。 (2019年3月15日 3時) (レス) id: 8246ba9fb8 (このIDを非表示/違反報告)
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