5 背中 ページ6
「そんな事より、カルテはあるの?」
再びAさんが先生に質問をした。
すると先生は小さく謝罪の言葉を口から吐きながら机の上に並べてあるカルテを漁った。
どうやら混入していなかったらしく横に首を振った。
するとAさんの表情が変わった。
まるで過去のトラウマを思い出す子供のように。
「何でないの!!
神宮寺も管理しててよ、否、私のせいだわ...
私がきちんとしていないから...
私のせいで真実ちゃんは命を落としてしまうんだわ!!
ごめんなさい、ごめんなさい...!!
やめて、怖い、怖い!!」
A、さん...?
大丈夫かこれ、否明らかに大丈夫じゃないぞ。
顔は青白く、体は震えていて、瞳からは涙が溢れている。
でも、Aさんがおかしいと気付いても俺の体は動かなかった。
「落ち着きなさい、
誰か彼女の診察室から あの人形 を取ってきてくれませんか?」
動かなかった俺とは逆で、直ぐに動いた先生。
先生はAさんを優しく抱き締め、背中を摩ってあげていた。そして近くを歩いていた看護師に声を掛け、物を取りに行かせた。
どうしてこんなに行動力があるのだろうか、俺なんてあんなAさんの姿を見ても動けないし、ましてや美しいと思っている底辺の人間だ。
どうして俺は一目惚れした人の手助けを少しもしようとしないのか。
自分で自分が恥ずかしく感じた。
でも、不思議と声は出た。
「せ、先生...
Aさんは大丈夫なんですか...?」
「大丈夫ではないね、少し休ませないと彼女が辛いだろう
独歩君、彼女の為に飲料水を用意してくるからその間彼女の背中を摩っていてくれないかな?」
「は、はい、喜んで!!」
先生とポジションチェンジをするようにAさんを優しく抱いた。
とても細く、同じ人間とは思えなかった。
物凄く、物凄く恥ずかしいがまだ震え、涙を零し、息を荒らげているAさんを見ればそんな感情なんてどうでも良くなってしまった。
Aさんは先程看護師が渡してきた犬のぬいぐるみを手に持ち俺の胸の中にすっぽりと収まっている。
次第に息も落ち着いて来て、独り言もなくなったAさん。
涙目で頬を赤らめた彼女は妖美な美しさを醸し出していた。
こんな彼女の姿を見てしまっては男の俺が我慢出来る訳ないだろう。
彼女の頬に手を触れる、彼女と顔を近付ける。
彼女の、
「独歩君、彼女の様子はどうだい?」
先生の言葉が耳に入る。
俺は一体何をしているんだ。
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走るプリン(プロフ) - のん民さん» 変えておきました,教えて頂き有難う御座いました! (2019年3月15日 7時) (レス) id: 83f0796dfa (このIDを非表示/違反報告)
走るプリン(プロフ) - のん民さん» 読んで頂き有難う御座います.少し特殊な矢印を使っていたのでもしかすると文字化けして見える方が居るのかも知れません。 (2019年3月15日 7時) (レス) id: 83f0796dfa (このIDを非表示/違反報告)
のん民(プロフ) - ちなみに私はパソコンで見てるので、もしかしたらスマホやiPad、DSなどで見てる方は大丈夫かもしれないです、そこら辺はよく分からないですが(⌒-⌒; ) (2019年3月15日 3時) (レス) id: 8246ba9fb8 (このIDを非表示/違反報告)
のん民(プロフ) - 面白そうです、お気に入り登録しました、更新頑張ってください。 それからひとつ、ページ1自己紹介のところなのですが名前や齢の後の、おそらく記号なのでしょうか?その部分が文字化けしています。 (2019年3月15日 3時) (レス) id: 8246ba9fb8 (このIDを非表示/違反報告)
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