100. 参戦 ページ7
『…夏油君以外にも、言ってくれる「人」がいるとは、思わなかったな』
「あれ?俺達、そんなに信用されてない?」
えー…、五条はともかく俺と福田君のことは、認められていると思ってたのにー…、と二階堂は不貞腐れている。そして2人のやり取りを傍らで聞いている七海は、ただその内容に疑問符を浮かべているようだったが、空気を読んでか割り込むようなことはしなかった。
『…別に弥生達の事は認めているけど…、そもそも"契約"が破棄された以上、呪術高専の連中とは関わりたくない』
「まー…、そうだろうけどさ。実際、Aを表舞台から消したのは上層部だし」
「!!」
七海は二階堂の言葉に耳を疑った。そして睦月が言っていた通り、それは事実であることを認識する。
『…今は「呪い」を祓うことに専念する。――…睦月は?』
「福田君が回収し、Aが戻り次第対応できるようにしてある」
『…そう。恐らく連中は"睦月の遺体"を探し回るはず。何としても…隠し通して』
「分かってる。同じ過ちは繰り返さない」
先程まで飄々としていた二階堂の様子が、急に一変して真剣みを増したため、七海は驚いた。そしてAの言った"連中"という言葉が気になった。
「(…呪詛師単独ではない…と?)」
つまり、睦月を殺害した者は呪詛師ではないという可能性が浮上していた。だけどこれ以上彼女に問いかける余裕はなく、二階堂の言葉に頷くと、彼女は背を向けて、右手から薙刀を召喚し、周囲に蔓延る呪霊へと駆け出していった。
――
二階堂達はAが戦っている様子が見える高台へと移動し、その戦いを見守る。
それはある意味異様とも思える光景であり、Aが召喚した呪霊や怨霊達は、各々が様々な能力を駆使し、京都市内に蔓延る呪霊達に襲い掛かっている。また彼女自身も、怨霊を使役させて、薙刀を振るっている。
「…七海君はAの戦っている姿を見るのは初めてだよね」
「そうですね…」
そもそも七海が在学している間、Aと顔を合わせたのは沖縄観光の時と、姉妹校交流会の時の2回だけである。姉妹校交流会の時は、Aが召喚した怨霊と対峙することになったのだが、その時ですら、中々強い怨霊を使役していると思っていた。
「あれは、呪霊操術ですか?」
「いや。Aは術式を持ってないよ」
「…え?」
二階堂は七海の方を向かずに言葉を紡ぐ。
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作者名:Haru yama | 作成日時:2022年2月5日 19時