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125. "帳"破壊 ページ32

「…この帳の中だ」


五条は術式を使い、一点集中で放つ。すると零地点からの放出により、帳の一部分に亀裂が走り…


バァン!!


帳が破壊された音が全域に響き渡る。それと同時に、帳内で領域展開が発動されていたのか、それすらも解ける。


「…!Aと…、誰かいる」

「まさか―…呪詛師?」

「その可能性は否定できない」


五条と七海はAのいる方向へと駆け出した。


――

そこは既に祓われた呪霊と改造人間の残骸が広がっており、その近くにはもたれ掛かるように、Aが息を切らしている。だけど左目や両耳からは血が流れており、更にその状況は明らかに最悪で。


「ほう、今回はAの勝ちだね」

「…!!お前が…、」

「やぁ初めまして、都立高専関係者の皆さん。僕が久禮田家の双子を執拗に狙う―…久禮田 神無月だ」


ご丁寧に自己紹介を始めるその男は、相変わらず目元を仮面で覆っており、素性が明らかではない。それでも―…、11年越しに現れたその呪詛師に、五条と七海は警戒を強める。
神無月自身も多少傷を負っているようだが、やはりAの方が重傷で、五条は目の前の光景にいら立ちを覚え、殺気を神無月に向けている。だが彼は一切動じる様子はない。


「君らと合流できたことだし、僕はもう用はない。目的は果たせたしね」


神無月の視線の先には、息も絶え絶えのAがいた。


「A、またね。次こそ―…君を手に入れるから」

『――』


耳を潰されているため、彼の声は聞こえていない。更に喉元を刺されたことにより、治療が遅れていた。そしてその瞳も、彼の姿を映すことはない。


「…っ!待て!!」


神無月はニヤッと笑い、その場に改造人間を召喚して、その場から消えた。五条は追いかけようとするも、Aの状態が深刻なため、後追いはしなかった。


「Aさん!」


七海はAの元へと駆け寄った。声は出ず、ヒュー、ヒューと空気が抜ける音だけが聞こえる。


「…喉を、刺されたんですか…」


するとそれまで動かなかったAの左腕が突然、バキッという音を立てて、骨同士が繋がる。それにより、多少無意識の状態であっても、ゆっくりと動き出した。
何事かと不思議にみる五条達を他所に、左手に呪力を込めると、左目を覆うように手を添えて反転術式を施す。それにより左目の視力が回復し、続いて両手に呪力を込め、両耳を覆うようにすると、当然のごとく治療を施した。そして最後に、喉元に手を添えると、声を取り戻した。

126. 誰にも殺せない男→←124. 改造人間 vs 使役呪霊



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作者名:Haru yama | 作成日時:2022年2月5日 19時

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