2-23. 拒絶 ページ10
外に出たAは、そのまま高台へと駆け上る。
全てを見渡せる場所まで行き、そこに座り込む。そして…
『…殺してやる。殺してやる!!!』
狂ったように叫び、Aは剣を抜く。
全てを拒絶したことにより、彼は闇に溺れ自我を失い始めていた。
近くにあった石壁を剣で傷をつけていく。
キンキンと鈍い音が響き、それでも収まらなかったのか素手で壁を殴り始める。
見る見るうちに殴っている部分は紅く染まり、拳も血だらけになっていた。
ぶつけようがないこの想いに、Aは自暴自棄になりはじめていたのだ。
「…やめろ!!」
そんな彼の手を掴み、止める者がいた。
それにより、自らの手が壁に再び当たることはなかった。
「こんな事しても…、何もならない」
『…放してくれ』
Aはその手を振り払おうとするが、拒まれ逆に壁に押入られる。
『何を―…』
何をする―…、そう口を開こうとした瞬間、その先の言葉を言うことはなかった。
唇を塞がれたからだ。
その相手が誰なのかはすぐに理解した。
「…A」
『(アラゴルン…)』
先に来たのが、拒絶だった。
アラゴルンには彼を想う人がいる…、愛が欠落した自分に向けないでほしい。
それがAの想いだった。
アラゴルンは何度も唇を重ねてくるが、Aは力一杯に抵抗した。
そして、名残惜しそうに離される。
「……」
『…俺は、アンタが嫌いだ』
口に出たのは、嫌い、という言葉。
好きという気持ちに気づく前に、拒絶することを選んだのだ。
『人間なんか…嫌いだ』
「……」
アラゴルンはAの過去を知った以上、深く入り込むことが出来ないでいた。
しかし、今目の前にいるAは、誰かに救いを求める姿。
本当は心のよりどころを求めているのだ…。
『…消えろ』
「そうやって、拒絶するのか?」
『……』
だが、アラゴルンはその場からいなくなる事はしなかった。
Aにとってそれが、あまりにも苦痛を覚えた。
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作者名:Haru yama | 作成日時:2021年3月13日 18時