80. 警告 ページ33
「ね?大人しくしていてください。夕飯にさつまいもご飯を作ってあげますから」
初見は苦しみに顔を歪める煉獄の頭を撫で、Aの事を勝ち誇ったように見る。
が、Aは煉獄のことなど初めから眼中になかった。
『じゃ、お大事に』
そう言って煉獄から背を向けて歩き出そうとしている。すると、何故か彼はこちらに手を伸ばした。
「あ…、A…」
その手を握ることはなく、彼を一瞥した後、そのまま炭治郎のいる部屋に向かった。
――
炭治郎のいる病室に入る。変わらず彼は眠り続けていた。枕元の隣にある机には、まだ色鮮やかな花が生けてある。
『…君と話したいことは山ほどあるのにな』
彼が眠っているということは、恐らく禰豆子も深い眠りについているのだろう。
『…また、来るよ』
彼の手をそっと握ると、病室を後にした。
――
屋敷に戻ろうとした途中、初見に遭遇した。
『……何?』
「ふふ。どうですか?この私の格好」
初見はAの前でくるりと回った。同じ羽織がはためく。
「うふふ。これで私もあなたに近づけましたか?」
『…すごいな、よくそろえたね』
「そんなに睨まないでくださいよぉ!特注なんですよ、これ。そっくりでしょ?」
本当に―…、その羽織の意味も知らない奴に真似されると、つくづく腹立たしい。
「私はね、緋威羅木さんになりたいの!そうすれば、煉獄さんも私の事を見てくれる」
あぁこれはもはや面倒くさい。究極に面倒くさい。Aの中で黒い感情が湧き出る。
『…それは勝手だけど。そのうち、煉獄が死ぬぜ?』
「…え?」
突然の言葉に、初見は目を見開く。煉獄が死ぬ…、それは一体どういうことなのか。
『お前、見た感じ鬼を一度も殺したことないだろ?そんなどんくさい奴が、俺の容姿を真似したところで、鬼の餌食になるだけだ』
「なっ…」
初見は話についていけない様子で、動揺を隠せないでいる。
『どうする?このまま、俺の容姿を真似して周囲の人間を見殺しにするか。煉獄に振り向いてもらうためなら、どんな犠牲も惜しまないか』
言った傍からふとAは思う、これは究極の選択だと。どちらも煉獄の死を意味する。
「…っ…」
初見は答えられないようで、唇を噛み締めている。
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作者名:Haru yama | 作成日時:2021年5月26日 0時