78. 任務�� ページ31
｢う、うわぁあああ！！｣
そちらに向かうと、鬼に頭を掴まれている井草がいた。必死に抵抗しているようだが、背中がガラ空きだった。その背中めがけて鬼が、切り裂こうとしている。
Aはすぐさま間合いに入り、背中めがけて斬りかかってきた鬼の攻撃をまともに受け、だけど同時にその鬼と、井草を掴んでいる鬼の頸と腕を斬る。
｢Aさん！！血が…っ！！｣
右頬から鎖骨にかけて思い切り斬られたが、気にする様子はなく、井草の腕を掴むとそのままいったん鬼達から距離を置く。
『さすがにこれは厳しいな。君は一旦、この場を離れろ』
すかさず鬼の鋭い爪が二人に襲い掛かり、刀で受け止める。
｢…で、でも！！さすがにこれだけの数を1人で…、しかも僕を庇って…！！｣
『こんなのかすり傷だ。君は身の安全の確保を考えろ』
｢…は、はい…！｣
鬼が走り出す井草を追いかけようとするも、その前に立ちはだかる。
『テメェらの相手は俺だ』
｢アイツを逃したのが運のツキだぁ！！お前1人で俺らの相手は無理に決まってんだろォ！！｣
『誰に向かって口を利いてる』
｢…おい！！ちょっと待て！！この白髪の剣士、もしかしてあの方が―…｣
『俺を退屈にさせないでくれよ？』
一頻り鬼を殺し終え、塵と成し白刀に吸収されていく鬼の死骸を見渡す。生き残った鬼はいない。全て滅した。
『…さて、井草は無事かな？』
来た道を急いで戻る。すると、木の傍では丁度鬼1体を仕留め終えた井草がいた。
｢…あ、…A…さん…｣
井草はAの姿を見るや否や、刀を鞘に納め、自身の荷物から応急処置用の道具を取り出す。
｢止血しないと！！頸動脈斬られているんじゃないですか！？｣
『あー、平気。そんなに焦らなくても…』
｢そんなわけないじゃないですか！｣
いつになく真剣な井草に、Aは驚く。
｢命は1つしかないんです。些細な傷であっても、重症化することだってあります！！｣
『……』
｢僕、これでも鬼殺隊に入る前は医学の勉強をしていたんです。両親が医者だったこともありますけど…。傷を見せてください！！｣
井草の切羽詰まった様子に、目を見開く。だけど差し出された手拭いを受け取ることはしなかった。
『井草、心配してくれてありがとう。でも、本当に平気なんだよ…』
そう言ってAは斬られた部分を指でさす。それを目で追っていく井草は、驚きの光景を目の当たりにする。
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作者名：Haru yama | 作成日時：2021年5月26日 0時
