65. 嵐の予感 ページ18
「そんなことはないと思うが!!!」
「あはは、いいですよ。別に。気遣ってくれなくても。」
「外見を気にする男もいるのだろうが、俺は気にしない!!何よりも内面が大切だと思っている!内面が美しい人は本当に美しい!!母上も、立派な志を持たれていた方だったんだ!」
「まぁ」
「外見を気にするのはみみっちいことだ!!内面が美しい人ほど綺麗な女性はいない!初見少女。君は努力しようと思える女性だろう?どれだけ腕が痛くても、君は俺の鍛錬に何とか着いてこようとしている!君の内面は美しい!!君がどんな体型でも、好いてくれる男がいるということを忘れるな!!」
――この無自覚な煉獄の一言により、とんでもなく面倒な問題が生じ、後にA自身も巻き込まれる事件が起こるとは、この時誰一人として知る由もなかった。
――…
「水の呼吸、弐ノ型、水車!」
いい音がして竹が両断される。
『お見事』
今日も汗を流しながら鍛錬に勤しむ井草を、のんびりと眺めるA。
肩で息をする井草に手ぬぐいと水の入った瓢箪を渡す。
『ほい』
「あ、ありがとうございます…、洗ってお返しします…」
『気にするな、そのまま使えばいい』
「あ、はい…」
『…じゃ、今夜任務行くから』
井草はAを二度見する。あまりの驚きに目を見開いて。
「…え?」
『実戦も必要だろ』
「う、うう、嘘ですよね!?だ、だって俺…、足手纏いにしかなりませんよぉ…」
『それは俺が決める。今回の任務の内容は、鬼の巣喰う神社だ』
「…はいぃ…」
『…戦えなくとも、刀は絶対に構えたままにしろ。君はただ鬼の姿を目で追えばいい』
それは、井草自身が刀を握ることを恐れていることに気付いているから。だから戦わなくてもいいから、刀を構える基本的なことは決して忘れるな、と言いつける。
「!…わ、わかりました…」
それまで俯き気味だった彼の表情が、ようやく前を向いてくれたようで、Aは安堵した。
『…任務行く前に、甘味処寄るか。好きか?甘いの』
「あ、はい…甘いもの好きです」
『そうか』
それから身支度をして、屋敷を出た。
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作者名:Haru yama | 作成日時:2021年5月26日 0時