58. 近頃の鬼殺隊 ページ11
―蝶屋敷―
『…宇髄天元が柱を引退、炭治郎は意識不明の重体ね』
色々と用事を済ませてから、立ち寄ってみると胡蝶からその話を振られる。どうやら2ヶ月ほど彼らと接触しないうちに、炭治郎達3人と宇髄は、自身の嫁を助けるために女装し、遊郭に潜入したという。
そしてそこで遭遇した上弦ノ陸との戦い。炭治郎は色々とあり重傷の上、意識不明の重体。そして宇髄は左目と左手を失い、柱を引退した。
『…上弦を倒したのは113年ぶり？だっけ』
不吉な数字だなぁと、呑気なことを言うAを他所に、2ヶ月ぶりに彼の姿を見た胡蝶は、変化に気付く。
｢…Aさん、何か…変わりましたね｣
深く訊ねない胡蝶にAは彼女から視線を逸らす。
ふと、胡蝶はAの瞳の色が少し赤みを帯びていることに気付く。心境の変化が、瞳の色をも変えたのだろうか。
『…そういえば、今日本部より召集があるようだが』
｢そうですね。私もこれから向かうところです｣
そう言って2人は本部へと向かうと、既に他の柱達の姿もあった。
今の柱の数は、A含め9名。宇髄が引退したことに、今でも違和感を覚える。
｢よく集まってくれたね、皆｣
奥からお館様が現れた。
｢お館様におかれましては、ご壮健でありまして何よりです｣
｢ありがとう、蜜璃｣
お館様は1人1人に目を合わせると、口を開く。
｢…皆は、近頃の鬼殺隊をどう見る？｣
その問いに最初に反応したのは不死川だ。
｢前回の柱合会議で言わせていただいた通りです。剣士が弱い、骨のある奴がいません｣
｢私も不死川さんに同意します。中には、任務から逃げている隊士もいるそうです｣
｢前に任務で同じになった庚隊士などは、全く鬼と渡り敢えておりませんでした。話になりません｣
｢そうだね。Aは？ずっと単独任務だったけど、今までの間で気づいたことはあるかい？｣
お館様の問いに、Aはしばし考え、口を開く。
『…全体的に弱すぎる。最終選別で活躍した奴が癸から昇格し、弱い奴は強い奴に守られて入隊出来た。弱い者は努力しない限り強くはならない。が、鍛錬を怠り、任務から逃げる奴は隊士ではない。そこらの鬼を知らぬ人間と大差ない。それこそ鬼に怯え、儀式で村人を生贄に捧げ続けなければならない、村の長の方がずっと強い人間だ』
淡々と言うが、今までまともに語ることはないと思っていた他の隊士達からは、驚きの表情をされる。
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作者名：Haru yama | 作成日時：2021年5月26日 0時
