《ハルチカ》こんな四角関係いやっ！ part３！

エレファンツ・ブレス　41 ページ50

マ「そこです」


狼狽したマレンが口を挟んだ。


マ「普通に考えたらあり得ない。アメリカで永住権をもった外国人が、兵役の義務を課せられたのならわかります」


草「それが実際に会ったんだ」


「わたしもあの日帰って調べたの。
当時、日本国籍を持ちながらアメリカ留学中にベトナム戦争の徴兵を受けた若者がいた」


草「そう。観光ビザを永住権に切り替えたとたん、兵役義務が生じて徴兵された若者もいれば、永住権を持たない、まだ観光ビザでアメリカに長期滞在していた若者が軍に徴兵されたケースが無数にあった。
これは日本外務省の調査で明らかになっている」


日野原さんと千夏は言葉を失ったまま、テニスのラリーでも観戦するように、わたしと草壁先生に顔を交互に見る。


わたしはつづけた。


「お爺さんが渡米したのは一九六六年。兵役の危険性を知り、サンフランシスコからシカゴに移動した。
けど翌年、五十万人を超える最大数の兵士がベトナムに投入された。お爺さんが音信不通になった年と重なる。
そして一九六六年以降、戦争は最終局面に向かって悲惨な道をたどっていく。
その象徴の一つが、あの三枚の絵。

…ですよね？草壁先生」


わたしは草壁先生のほうを向く。


草「ああ。よく知っているね」


「あの時は曖昧だったけど、調べたらやっぱりって感じでした」


萩本弟がデジタルカメラで撮った三枚の写真をホワイトボードに貼り付けた。




奇妙な点描の絵。空と森と象の絵＿＿＿＿




『朝焼けの中で眠る象の絵』

一枚目 空(黄)、森(緑)、象(灰)
二枚目 空(橙)、森(緑)、象(灰)
三枚目 空(黒)、森(緑)、象(灰)



草「日野原さんは誤解したかもしれないが、これは朝と夕方と夜の絵じゃない。
表題通り、三枚とも朝焼けを描いた絵になるんだ。ただしお爺さんの説明には嘘がある」

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