《ハルチカ》こんな四角関係いやっ！ part３！

エレファンツ・ブレス　40 ページ49

日野原さんに睨まれ、わたしたちの目が泳ぐ。
草壁先生は部室の隅で椅子に座り、深々と考え込むしぐさをしていた。


最初にぱくぱくと口を開いたのは萩本兄だった。


萩兄「…あの三枚の絵の意味が分かりかけたとき、正直ぞっとした」


マ「僕も気が動転した」


マレンの口が薄く開く。


マ「とにかく、あれを避けるのに必死だった。僕自身、とても信じることなんてできなかったから。
だから、金廣さんの気分が悪くなったのも納得した。
あんなことを知って、平然といられる方がおかしい」


「…わたしも最初は違うんじゃないかと思った。でも、それしか考えられないの」


日野原さんの目がハルタに移る。
ハルタが身構えた。
そのとき割って入ったのは、草壁先生の声だった。


草「エレファンツ・ブレスは、奇妙な色の名前だけが残されて色見本は存在しない。
つまり最初に見つけて名前を付けた本人しかわからない色なんだ。
証明する方法がこの世に存在しない限り、お爺さんが見たエレファンツ・ブレスは『誤認』になる」


日「わかっていますよ」


日野原さんは息をついた。


日「問題はなにを『誤認』したか、でしょう？」


草「象の寝息じゃ納得できないかい？」


草壁先生のは聞き返す。


日「できませんね。だいたい動物園で象が寝る場所は、宿舎の中と決まっています。
一般人の爺さんが見られるはずがない」


ハ「…見ることはできたんです」


ハルタが固い声で言った。


日「は？」


と眉を寄せる日野原さん。


「お爺さんは、象が眠る姿を間近で見ることができた。そういう場所にいた」


日「おい、だから…」


「お爺さんの言葉に嘘はない。この世の地獄で、本当に安息の場所を探していたんです」


日野原さんはすっと息をつめた。


日「…アメリカじゃないのか？」


一九六六年に渡米。

突然の失踪。

音信不通。

十年後に帰国。

帰国後すぐ描いたあの三枚の絵。

そして……





四十年も続いた心的外傷後ストレス障害＿＿＿＿


わたしとハルタの口から語られた真相に、日野原さんと千夏は絶句した。









＿＿＿＿貴、ハ「「お爺さんはベトナム戦争に徴兵されていたの／いたんです」」

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