《ハルチカ》こんな四角関係いやっ！ part３！

エレファンツ・ブレス 19 ページ27

萩兄「通常なら発明部が設置した特製お布施箱経由だが、申込書と一緒に部室の引き戸の間に差し込んであった。
試しに領収書を同じ場所に差し込んだら、翌日抜き取られていた」


萩弟「野生動物を餌付けしているみたいで楽しかったね、兄ちゃん」


わたしは頭を抱えたくなる。


萩本兄も困った顔になる。


萩兄「問題は、頻繁にオモイデマクラの催促がくることなんだ。切り貼りの文書で」


そんなにオモイデマクラが欲しいのか…？
というと、その人はオモイデマクラというこいつらが作った発明品に頼るほどの何かしらの問題を抱えているということ…？


萩弟「こっちはエレファンツ・ブレスで悩んでいるのにねえ、兄ちゃん」


萩兄「まったくだ。泣く泣く色彩辞典を購入する羽目になった。
英文版で三万円。
踏んだり蹴ったりの大赤字だ」


萩本弟がキャビネットから大きくて分厚い辞典を持ってきた。


萩弟「記録だと、エレファンツ・ブレスから八年後にエレファント・グリーン、四十四年後にエレファント・スキンという色が登場しているんです」


わたしたちの目の前でページをめくり、色見本を見せてくれる。


エレファント・グリーンは暗い緑色。
エレファント・スキンは茶色みを帯びた灰色。


ハ「ふうん」


と一緒にのぞき込むハルタが口を開いた。


ハ「象を狙うハンターの服と象の表皮の色かな。
たぶんこの時期、象牙が目的の密猟が流行っていたんだろうね」


日「関連性はあると思うか？」


日野原さんが横目で尋ねる。


ハ「ないと思う」


ハルタは即答した。


「うん。牙だけのために命を狙われるんだから、青息吐息と似たような意味合いかと思ったけど、それだと時系列的に合わない」


エレファンツ・ブレス。誰も見たことがない色…


千夏「ねえ、連絡は一方的通行なの？」


萩兄「こっちからは学校のホームページの掲示板を利用している」


ハ「妙だね――匿名にこだわる理由が」


わたしと萩本兄は頷く。


萩兄「そこで不本意だが、部室の前に防犯用の監視カメラを設置した」


二枚の写真がマグネットでホワイトボードに貼られた。
二枚とも暗くて粗い画像だった。
一枚目は、背の低い女子生徒がフーッ！と威嚇する猫のように写っていた。
フラッシュがたかれたのか赤目現象が生じている。
二枚目は、一目散に逃げていく同じ女子生徒の後ろ姿だった。


本物の野生動物、珍種の密林動物みたい。


ふと気づいた。
彼女は肩に大きなケースを背負っていた。

エレファンツ・ブレス 20→←エレファンツ・ブレス 18

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す