クロスキューブ 29 ページ8
成島さんが目をそらし、
成「．．．できるわけないじゃない」
と呪詛でも吐くように呟いた。
「その通り。このキューブは論理的思考では決して解けない矛盾や不合理さを含んでいる。
それでも貴方の弟はパズルとして遺した。
小児脳腫瘍と診断された貴方の弟は、成長するにつれて世の中の理不尽さに気づいたんだと思う。
それでも希望を失うことはなかった。
解決不能な難題にぶつかった時、どうすれば心が救われるのかを知っていたんだよ」
ハルタが真っ白なキューブをかかげて見せた。
ハ「それは論理の壁を破った悟りの世界だ。
それをこのキューブできみに伝えようとした。
でもね、一言で論理の壁を破るといっても大変なことなんだ。
偉いお坊さんでも下手すれば何年、何十年とかかってしまう。
そのためにきみの貴重な青春時代を奪う権利は誰にもない。
吹奏楽に打ち込んでいた当時のきみを知る弟も、それを望んでいなかった。
だからこのキューブには、きみのために時間をかけずに解ける工夫がされている」
ハルタは教卓の下に隠してあったスポーツバッグを持ってくると、成島さんの前にある椅子に座った。
悠々と足を組み、かたい表情を崩さない成島さんと向き合った。
ハ「話を一旦変えるよ。
『ゴルディオスの結び目』というアレクサンドロス三世が残した紀元前の伝説があるんだ。
小アジアの古代国家にゴルディオスという貧しい農民出の王様がいて、彼は神殿に自分の牛車を祀って、複雑に絡み合った縄で牛車を結ったんだ。
この結び目を解いたものがアジアの支配者になれるという伝説を残してね。
それから諸国の実力者や知恵者があらゆる手を使って必死に縄を解こうとしたけれど、長い間どうしても解くことが出来なかった」
それまで沈黙を守っていた草壁先生がかすかに表情を変えた気がした。
ハルタは続ける。
ハ「．．．時を経て、ゴルディオスの結び目を解く者が現れる。
それがアレクサンドロス三世だ。
どうしたと思う？なんと彼は多くの兵士の前で、腰の剣を使って結び目を切断してしまったんだよ」
成島さんの目が大きく開き、ハルタは語調を強めた。
ハ「解決不能な問題を、非常手段で解決する。
それがきみの弟が遺したメッセージだ。
多分きみの弟は自分の命が長くないことを悟っていた」
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のの - 夜月さん» ありがとうございます！ (2016年4月7日 15時) (
レス) id: dd3ac278ec (このIDを非表示/違反報告)
夜月 - fruitさん» 才能だなんて！そんな！光栄です！毎回、コメントありがとうございます！これからもお願いします！ (2016年3月17日 0時) (レス) id: ca0edcb47b (このIDを非表示/違反報告)
fruit - オリジナル・・・とっても面白いです！ワクワクしてます！すごいですね〜(*´∀｀)才能なんでしょうね〜(*´∀｀)羨ましいです！頑張ってください！ (2016年3月16日 23時) (レス) id: 1c29b9fd37 (このIDを非表示/違反報告)
夜月 - あいさん» オリジナルは面白いかとても不安だったのですが、そう言ってもらえて光栄です！これからもどうぞよろしくお願いいたします！ (2016年3月13日 17時) (レス) id: ca0edcb47b (このIDを非表示/違反報告)
夜月 - ののさん» ありがとうございます！ですが、ゼロからのお話なので更新のペースが遅くなるかもしれません…まことに申し訳ありません…ですが！よろしくお願いします (2016年3月13日 17時) (レス) id: ca0edcb47b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夜月 | 作成日時：2016年2月12日 18時
