Honey Citrus ３

１０５ ページ9

.







「家です…けど……っ、」




「ふーん。」







・・・。






え。







何も言わない北山さん。








何で電話してきたんですか…





声に出さないけど、流れる沈黙に少し不安が募る。









「あの、会食はもう終わったんですか…？」



「おう、今さっき終わって解散したとこ。」



「……お疲れ様です、」








か、


会話続かないじゃん…！！！(涙)








もう……何言えばいいの？









また流れ始めた沈黙に


その場で体育座りして小さくなったまま焦ってたら









「…今日、悪かったな。」



「えっ…」







少し掠れた北山さんの声に


スマホを握ってた手がじわ…って熱を帯びる。









「前から約束してたのに、

　今日急に行けなくなったし、」




「そ、それで電話してきたんですか…？」




「…悪いかよ、」









……どうしよう。









「悪くない…です……っ。」







相変わらずぶっきらぼうな言い方なのに、


わざわざこんな事で電話してきた北山さんに

胸がぎゅ…って締まる感覚。









「ま、でも今日はそのまま帰れたから良かったか。

　何か見たいやつあったんだろ？」







不意に、何か力が抜けたように

そんなこと言ってる北山さん。








「そ、それは……っ、」







ドラマ見るなんて言ったの


…嘘に決まってるじゃないですか。








時々車の通るような音が


電話の向こうから聞こえてきて。






本当にさっき会食終わったばっかりで


まだ店出てすぐなのかな…なんて考える。









「……今日は21時くらいまで仕事してました。」




「おま……っ、そんな時間まで会社いたのかよ！」








正直にワケを話したら



案の定電話の向こうで北山さんの驚く声。









「データ飛ばした？

　そんなミスすんのお前らしくねーな、」







何か考え事でもしてたんだろ、なんて言ってる。









…北山さんのバカ。





何にも知らないくせに。









今日ずっと言いたいこと言えてなくて


いざ北山さんの声聞いたらなんか…





…目の前で点いてるテレビの音声が


段々耳に入ってこなくなってきて。









「…北山さんのせいです……っ、」




「俺が…何？」








ぽつ、って口から零れた言葉。








「北山さんが…、立花さんと行っちゃったから……っ！」









…やだ。






こんなこと口走る私の方がもっとバカじゃない。

１０６→←１０４

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す