Honey Citrus ３

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そういえば、今日会議室の前でぶつかっちゃった男の人…





藤ヶ谷さん知ってるかな、って思ったけど


私、特に名前も何も知らないんだった…






不意に藤ヶ谷さんの顔見てたら思い出して。








「ん？どうかした？」


「い、いえ……！何でもないです！」






藤ヶ谷さんの声に、慌てて我に返った。









「じゃあ、そろそろ帰ろっか？」



「そうですね…！」






何も教えてくれない藤ヶ谷さんに少し不満が残るけど、



仕事も無事に終わったことだし…！


(半分以上手伝って貰っちゃったけど…。)








荷物をまとめて、



ジャケットを羽織ってスーツ姿に戻った藤ヶ谷さんと


二人でオフィスを出た。









「週末は何するの？」




「えっと…、明日は結衣と川下さんが夜うちに来る予定で…

　あ、あと日曜日は弟が来ます、」




「あー……確かまだ大学生だっけ？」




「はい…！なんか大学で＿＿＿＿＿」






弟が授業で使ってたタブレットが壊れたらしくて、


私のやつもう使って無いからあげることにしたんだよねー…








藤ヶ谷さんに聞かれて、


今週末は賑やかくなりそうだな……なんて考えて。








「仲良くていいね、楽しそう」



「ふふ、たまに喧嘩もしますよ？」







いつもの帰り道。





談笑する私達の声が


他に誰もいない暗闇に、溶けて消えてく。









……藤ヶ谷さんがいて良かった。







仕事のことも助けて貰っちゃったし、



何より






……一人の時は

北山さんのことで頭がいっぱいだったから。








会社を出て、二人で歩いて帰る間も



冗談言い合ったり


終始他愛も無い会話してたり。







少なくとも


あのまま一人で考え込むより、



こうして藤ヶ谷さんと話してた方が気が楽で。









「ホントに今日はありがとうございました…！」



「どういたしまして。週末楽しんでね、」






共用廊下を歩いて、私の部屋の前で立ち止まる。






じゃあ、って自分の部屋のドアに手を掛けたら









「あの…さ、」



「…？」






何か言いたげな藤ヶ谷さんの声に


ドアノブに掛けてた手を離す。






……どうしたんだろ？






不思議に思って振り向いたら、



チラッて一瞬だけ目を逸らした藤ヶ谷さんが








「……北山のこと。

　良かったら、話聞くくらいならできるから、」





ね、って



私を真っ直ぐ見つめてそう言った。







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