Honey Citrus ３

１３４ ページ38

.






ガチャッ＿＿＿







自分の部屋のドアを開けて、


力なくリビングまで進んで荷物を無造作に置いた。









テレビの前、ラグに座ってると


北山さんが部屋へ来た時のことを思い出してしまいそうで。








「あつい……っ、」





足速に帰ってきたからか


体が熱い気がする。







心なしか目の周りもジーン…って疼く。








…当たり前か。泣いたんだもん。





ましてや、北山さんの目の前で。









部屋の中のでは無い、違う空気に触れたくて


窓際まで歩いてきて



そっと窓を開けた。







その場に座り込んだら、


まだ少し冷たい4月の風が入ってきて。








コテン、って頭を壁に預けて


ボーッとしてみる。








……北山さん、


めんどくさい奴、って思ったかな。






１回キスした位で


勘違いするような女は嫌いかな。








きっと私なんか

少し世話を焼いたただの後輩で、


そんな感情は北山さんの中には無かったかもしれないのに。









それでも＿＿＿








言われた仕事ちゃんとやり遂げた時、





ご飯連れてってくれて

私が食べてるとこなぜか面白そうに見てくる時、






……キスされた日、









あの、目尻に少しシワの寄る


まるで少年のような明るい笑顔ばっかり頭に浮かんできて。









「……バカ。」







誰に向けたのか自分でも分からない言葉と共に



また目に涙が滲みそうになった時、









＿＿＿♪♪









…こんな顔で出れませんけど私。








部屋に鳴り響いたインターホンの音に


動く気力も無くて。







昨日不在票入ってたからその分の宅配便かな…







壁にもたれかかったまま


帰ってくれるまで目瞑ってようとしたら









「A、いる…？」







えっ……？








廊下の向こう、


玄関の方から微かに聞こえた声に


思わず顔を上げた。








藤ヶ谷…さん……？









え、待って待って…




今日あの後食事会じゃ…







頭でよく理解できてないのに、


聞こえてきた声に引かれるようにして

慌てて玄関へ向かってった私。









「……A？」






ストン、って玄関に降りた瞬間


私が来たのが分かったのか

もう一度名前を呼ぶ、藤ヶ谷さんの声。









ドアノブに手を掛けて、


思わず固まった。









……私、



藤ヶ谷さんに甘えてばっかだ。

１３５→←１３３

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す