検索窓
今日:2 hit、昨日:8 hit、合計:5,710 hit

ページ12

「兄上は、きっとこのことをあなたに話すつもりはなかったと思います。でも、私はどうしても知ってほしかった。兄上は本当にあなたのことを大切に思っていたって、あなた知ってほしかった。」
千寿郎の大きな目から涙がぽろぽろとこぼれる。耳の奥でごぉーと血液の流れる音が聞こえ、心臓が思い出さないようにしていた想いを溢れさせるかのように脈打つ。何かを言いたくて口を開けるのに、乾いて言葉にならない。何とか深呼吸をしようと大きく息を吸いこみ吐き出そうとすると、胸が詰まってどうしようもないほど熱い雫があふれ出した。戸惑い何か言い訳を考えるが、何も言葉にすることはできなかった。言葉にできないほどの熱い、抑え込み続けた彼への想いと悲しみの炎は私の喉を焼いてしまったらしい。体が引きちぎれてしまうのではないかと思うほどに、心臓は脈打ち体中を血液が駆け巡る。

千寿郎はそんな私に手ぬぐいを渡すと、「あなたはとっくにそんなもの超えていたことも、きっと兄上は、わかっていたのですね。」とつぶやくと一緒に泣いた。手ぬぐいには煉獄邸の線香と畳の香りがしみ込んでおり、まだ、ここで待っていれば汗だくの彼が稽古から戻ってくるのではないかという気さえした。


やっと落ち着いて、千寿郎と別れ帰路についたころ、すっかりあたりは暗くなっていた。外気の冷たさは余計に一人を実感させるので、走って帰る。息が切れても汗が目に入っても走って走って走り続けた。喉がひゅうひゅうとなるが、そんな苦しさなんて些末なことだ。もうどこを探しても、彼がいないなんてことに比べれば。脚がもつれて転ぶ。くらくらとして立ち上がれず蹲る。
「うわああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
細い裏路地で周囲に誰もいないことをいいことに、声をあげて泣いた。自分の赤子のような鳴き声がどこか遠くに聞こえて、のどの痛みも切れて血が出てるまで泣き果ててもまだ涙は止まらない気がした。
「なんっにもしらなかっだ!!でも!それでも、、一緒にいたかっだんだよう、、、」
いつかのように抱きしめてほしかった。いつかのようにまた笑いかけてほしかった。

*→←*



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (13 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
9人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 短編集
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

あおりんご(プロフ) - 吹雪さん» ありがとうございます!挑戦してみます。とてもゆっくりの更新ですが、読んで頂けて嬉しいです。 (2020年11月6日 22時) (レス) id: 8502751b8c (このIDを非表示/違反報告)
吹雪 - あの、悲鳴嶼さんは書いてもらえませんか。 (2020年11月2日 21時) (レス) id: a5355ab53e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:あおりんご | 作成日時:2019年8月15日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。