終わりの始まり ページ37
……全集中
『時の呼吸 肆の型 "刻輪"』
瞬間、鬼の周囲だけ、時の流れが遅くなる。
鬼の動きがスローモーションになり、うなじが露わになった。
わたしは木に飛び上がり、距離を取る。
この距離なら、切れる。
「ぎゃああああ！！！」
急所の一点に集中し、一気に刃を振り下ろす。
そして全体重を乗せて、その首を跳ね飛ばした。
『ッ……はぁ！！』
呼吸を開放すると、全身の血液がどくどくと脈打つのがわかる。
こめかみの血管がズキズキと痛み、破裂しそうだ。
『はぁ…ふぅー……』
膝をつき、目を閉じて額を押さえた。
目の奥が痛い。
『……まだまだだなぁ。』
ふっ、と息をつく。
もっと精度を上げて、技の威力増強と回復の両方が同時に使いこなせるようにならなくては。
わたしは頼み込んで、実弥さんの任務に付いていくようになった。
最も危険すぎるものは除いて、だが。
自分の血は変えられない。
傷付けば、どうしたって鬼を引き寄せる。
そして周りを危険に晒す。
わたしはもう、誰にも悲しい思いはさせたくない。死ぬまで "生きていく" と決めたから。
なら、強くなるしかない。
強くなるには、実戦を積むのが1番だ。
……………
実弥さんから、「どうしてもついてくるなら」と課題を言い渡された。
それは、呼吸の精度を上げること。
「右手の不自由さを補うには、呼吸を極めろ。筋肉の動きを増強できる。」
ただし、と実弥さんが付け加えた。
「矛盾するようだが、あまり呼吸を使いすぎるな。動かない筋肉を無理に動かすのは…自然の摂理に背くのと同意義だ。」
わたしの頬の傷に触れた。
「…お前の身体に負担がかかり過ぎる。」
眉間にシワを寄せ、頬の傷を掌で包み込まれた。
わたしの意を最大限に汲みつつ、心配してくれているのが痛いほど伝わってくる。
『はい。…命を粗末には致しません。』
そう微笑み、頬にある手に自分の手を重ねた。
使えるものはすべて使う。
でも、自分を粗末にはしない。
あなたのために生きると決めたから。
「……良い子だァ」
実弥さんの口角が上がり、引き寄せられる。
引かれるがまま、その広くて温かい胸に頭を預けた。
…………
『……どうかしましたか？』
柱合会議のあったある日の夜。
愛し合った後の、心地よい気怠さに浸るわたしの髪を撫でながら、考え込んでいる様子の実弥さん。
「A、お前…"痣者"について聞いたことあるかァ？」
『……"痣者"？』
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まるこ(プロフ) - 蝶々。さん» ありがとうございます。 嬉しいです！ もう少しだけ続きますので、宜しければ見届けてやってください。 (2020年6月13日 16時) (
レス) id: d44de4af2e (このIDを非表示/違反報告)
蝶々。 - .とても素敵な作品でした...。長男’ｓ…尊。次回作あったら見に行きますぅぅ！（泣） (2020年6月13日 16時) (レス) id: 99cfbd2b16 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まるこ | 作成日時：2020年5月25日 23時
