あなたと共に ページ34
耳元で風が唸る。
「Aさん、風が傷にさわりませんか?」
走りながらニコッとする炭治郎くん。
『大丈夫。ありがとう。』
炭治郎くんてすごいな。
同じくらいの身長のわたしを抱えてるのに、全然速度が落ちない。
鍛えられているんだろうな。
実弥さんはどうしているだろう。
炭治郎くんが烏を飛ばしているから、もう知っているかもしれない。
また心配かけちゃうなぁ…。
できれば実弥さんが帰ってくるまでに戻れるといいんだけど。
考えていると、ふわっと下半身が降ろされ、足が地面に着いた。
「着きましたよ。」
『あ…。』
顔を上げると、不死川邸のすぐそばだった。
入口では松明を持った使用人が出入りし、そして−…。
いた。
見間違うはずのない、白銀の髪。
こちらに気づき、駆け寄ってくる。
『…実弥さん。』
歩き出そうとすると、クンッと腕を引かれ後ろから抱きしめられた。
『炭治郎くん?』
「…Aさん、絶対に幸せになってください。」
耳元で囁かれ、頬に当たる軽い感触。
わたしが反応する前に離され、背中を押し出された。
「おぃ…何してやがる。」
炭治郎くんを睨む実弥さん。
「さようなら。」
炭治郎くんは最後にわたしに微笑みかけ、そして闇に消えた。
……………
実弥さんと向かい合う。
暗くてその表情はよく見えない。
『あの実弥さん、心配かけてすみま…ッ』
恐る恐る声をかければ、強い力で抱きしめられた。
『さ、実弥さん…?』
逞しい腕にそっと触れると、汗で上着がかなり湿っている。
きっと、ずっと探してくれていたのだろう。
「ッ…A、良かった…生きていてくれて。」
普段の彼からは想像できないくらい、弱弱しく絞りだすような声。
少し身体を離され、存在を確かめるように髪を、頬を撫でられる。
わたしの大好きな、大きな掌。
顔を上げれば、そこにはわたしだけを映す、泣き出しそうな優しい瞳。
伝えたい。
沢山泣いて、沢山後悔した。
『実弥さん。』
あなたはずっと、待っていてくれた。
わたしはちゃんと応えたい。
『あなたを愛しています、心から。』
今度こそ、自分の運命から逃げない。
『わたしはあなたの為に、生きてもいいですか−…?』
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まるこ(プロフ) - 蝶々。さん» ありがとうございます。 嬉しいです! もう少しだけ続きますので、宜しければ見届けてやってください。 (2020年6月13日 16時) (レス) id: d44de4af2e (このIDを非表示/違反報告)
蝶々。 - .とても素敵な作品でした...。長男’s…尊。次回作あったら見に行きますぅぅ!(泣) (2020年6月13日 16時) (レス) id: 99cfbd2b16 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まるこ | 作成日時:2020年5月25日 23時