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心が求める人は、誰? ページ33

『…どうしてここに?』
意外な人物の登場に、戸惑いを隠せない。

「たまたま近くで任務があったんです。そしたらAさんの香りと血の匂いがしたから。」
わたしの傍に片膝をついた炭治郎くんは、そう言ってニコッとした。

…そっか、彼は鼻が効くんだっけ。



炭治郎くんが傷の手当てをしてくれている間に、自分の過去をかいつまんで話した。

稀血のこと。
兄のこと。

「Aさんも鬼のせいで辛い思いをしたんですね…。」

同じ痛みを知る者だけがわかる、想い。
残された者の、決して消えることのない悲しみ。





「…Aさん。」
炭治郎くんはいたわるように、そっとわたしの頬の傷に触れた。
手は離れず、そのまま頬を包まれた。

『…炭治郎くん…?』
彼の瞳の奥にある熱に気づき、さりげなく距離を取ろうとする。
だが炭治郎くんはそれを許さない。
手は頬から首筋、耳の後ろに回り、引き寄せられる。

すぐ目の前には、彼の真剣な瞳。
固定されて逸らすことができない。



…だめだ、これ以上は。

『あ、あの本当にありがとう。』
この空気を断ち切るように、わたしは慌てて立ち上がった。

「帰るんですか?」
わたしを見上げる炭治郎くん。

「…不死川さんのところに?」
抑揚のない、声。

『たんじ…ッ!』
立ち上がった彼に、強い力で抱きしめられた。





「Aさん。こんなタイミングで言うべきじゃないのはわかってます。…でも。」


「俺をあなたの生きる理由にしてくれませんか−…?」


「俺が一生、あなたを守ります。」


強い力と反比例して微かに声が、そして肩が震えている。
大切に想う相手に、どう思われるか不安な気持ちが痛いほど伝わってくる。


『炭治郎くん…。』
わたしはそっと彼の背を撫でた。
その気持ちに応えられたらどんなに良いだろう。

でも、わたしは−…




”A、俺を選べ”

”お前が完全に気持ちを許すまで、待つ”

再会したあの日からずっと、わたしの心が求めるのはただ1人。




『……ごめんなさい。』

抱きしめられていた力が緩んだ。
眉尻が下がり、泣き出しそうな表情の彼。

「…やっぱり俺じゃ駄目なんですね。」
そう言って、寂しそうに笑った。




炭治郎くんが合図をすると、彼の鎹烏が舞い降りた。
「風柱に伝えてくれないか。Aさんは無事だって。…ちょっと失礼。」
『え…わっ!!』

わたしを横抱きにして、「しっかりつかまっていて下さいね」と微笑み、そのまま地を蹴った。

あなたと共に→←もう逃げない



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設定タグ:鬼滅の刃 , 不死川実弥 ,   
作品ジャンル:アニメ
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まるこ(プロフ) - 蝶々。さん» ありがとうございます。 嬉しいです! もう少しだけ続きますので、宜しければ見届けてやってください。 (2020年6月13日 16時) (レス) id: d44de4af2e (このIDを非表示/違反報告)
蝶々。 - .とても素敵な作品でした...。長男’s…尊。次回作あったら見に行きますぅぅ!(泣) (2020年6月13日 16時) (レス) id: 99cfbd2b16 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まるこ | 作成日時:2020年5月25日 23時

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