慣れないことはするもんじゃない（冨岡義勇） (ページ12)

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それはわたしじゃありません　① ページ12

『はぁ…。』折れた刃を見ながらため息をつくわたし。

「ドウシタ、ヨケイブスニナルゾ。」

『うるさい。アンタわたしの鎹烏なら、ちょっとくらいご主人様を慰めてくれてもいいじゃない。』

「ジゴウジトクダロ。」

『羽むしるわよ。』

「ヤメテクレ。」

『もー！また鋼塚さんに怒られるー！』

「コンゲツニハイッテナンカイメダ？」

『………3回目。』

「カタナヲオル、オマエガワルイ。」

『うるさいわね。折れちゃったものはしょうがないでしょ。』

義勇のお屋敷の縁側で足をぶらぶらさせながら、素知らぬ顔で羽繕いしている烏をにらんだ。
まったく生意気なんだから。

義勇のお屋敷は掃除が行き届いていて、落ち着く。

落ち込むことがあると、わたしは決まってここに来てしまう。
あ、ちなみに屋敷には勝手に入っちゃった。まぁ幼馴染の特権ってことで。

両手を後ろについて空を見上げる。
天気はすごくいいのに、わたしの心は雨模様だよ。
”女のくせに乱暴に振り回しすぎだ”って、また蛍さんに怒られちゃう。
炭治郎は包丁持って追いかけまわされたって聞いたけど。
そのうち私も、刀打ってくれなくなっちゃうんじゃないか。

『義勇、今日はいないのか－……』
空を見ながらひとりごとをつぶやく。
忙しいのはわかっているから期待はしてなかったけど。

「ハシラハミンナイソガシインダ。オマエトチガッテナ。」

『わかってるわよ。』

烏まで冷たい。
せっかく来たのに義勇はいないし。
刀がないと困っちゃうし。みたらし団子でも買って、潔く謝りに行こうかな。

『……よし、行こう。みたらし団子買うからアンタも運ぶのよ。』

「イクツカウキダ？」

『1年分。』

「……カイスギダロ。」

『足りないくらいよ。』

そう言って、勢いをつけて縁側から飛び降りた。