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「うわ、すごい...」
「でしょー?もう、風磨くんったら注文が多くてね、集めるの大変だったんだから。」
ドレスなんて、自分が着るなんて結婚式以外では無いと思ってた。
ラックに掛かっているドレスはどれも綺麗で、キラキラと輝くそれはやっぱり女の子が憧れるものだった。
「風磨くんが昨日Aちゃんの写真送ってきてね、"俺には分からないからお前が選んでくれ" って。もう、僕には僕で仕事があるのに!」
なんて言いながら、マリウスさんはなにやら用意をし始めた。
「着たいドレスは決まった?」
「どれも素敵で...ちょっとまだ...」
「だよねー。全部可愛いもん!なら先にヘアセットしちゃお!」
マリウスさんは私の肩を持ち、ストンと椅子に座らせた。
「綺麗な場所じゃなくてごめんね?でも、とびっきり可愛くしてあげるから!」
その言葉を境に、マリウスさんは一言も話さずに私の髪の毛をするりするりとセットしていく。
あれ、そういえば私、どうしてこんな場所でドレスなんて選んでるの?
「あの...マリウスさん。」
「んー?」
集中しているからなのか、さっきよりも反応が薄くて、少し話すのを戸惑ってしまう。
「えっと...風磨は、私をどこへ連れていくつもりなんでしょう...」
「え、聞いてないの?」
「はい...」
驚いたマリウスさんは、セットしていた手を止めて、鏡越しに私と目を合わせた。
「...まぁ、風磨くんが言いたく無い気持ちも分かるかも。」
「え?」
「行けば分かるよ。...よし!出来た!」
大して長くはない私の髪の毛をアップにして、前髪も全部上げてオールバックにしているけれど、後れ毛が適度に出ているお陰でキツくなりすぎていない。
まとめてある後ろの髪にはかすみ草が散りばめられていて、めちゃくちゃに可愛い。
「可愛い...」
「うん!風磨くんが好きそう!後はドレスだね...」
鏡の前に立って、まるで着せ替え人形かのようにマリウスさんが次へ次へとドレスを私に当てていく。
「うん!これだ!」
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作者名:はる | 作成日時:2018年3月3日 19時