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Fuma








「あーなんかさ、幸せだね。」

「急にどうしたの?」

「こうやってなーんにもない日でも、Aちゃんと2人で手を繋いで歩くことが。」









今までの自分ならありえないようなことが、自分の口から次々と出てくる。









「あ、当たった。」

「嘘。マジ?」

「まじー。初めて。」









近くのコンビニには、お目当ての物がなかったらしく、仕方なく同じアイスを買った。

それは当たり付きのもので、Aちゃんはそれを引き当てたらしい。









「これも初めて。」

「そうなんだ。」

「ふふ、小さな幸せだね、これも。」









アイスの棒を眺めながら目を細めるAちゃんが可愛くて仕方ない。









「で、本当にこれ食べるの?」

「もちろん。今日は頑張った自分にご褒美の日!」

「なにを頑張ったの?」

「んー。...なんだろ(笑)」

「おい(笑)」









手を繋ぐ左手とは反対の右手には、コンビニにしては大きめの袋。

"カップラーメン食べたい!" なんて旅行先のホテルのノリみたいな事を言い出して、Aちゃんはシーフード、俺は坦々麺を選んだ。









「一人暮らしの男みたいな考えだよね。」

「そう?まぁいいの。ずっとやってみたかったし。」

「太っちゃうよ?」

「それでも風磨は好きでいてくれるでしょ?」









あー、もう。

首なんて傾げて、確信犯だな。









「確かに。Aちゃんは細すぎ。」

「えー、ほんと?風磨と暮らし始めてから2kgは増えたよ?」

「え、全然分かんない。」

「まぁ、毎日一緒に居ると気付かないよね。」









足元にあった石ころをひと蹴りして、Aちゃんはそう呟いた。









「風磨と居ると、初体験ばっかりだ。」

「それはやらしい意味と捉えても?」

「もうっ、なに想像してんの。」









アイスの棒を大事に握った左手で、俺の肩を叩くけど、全然痛くない。









あー、なんかもう。

全部が幸せすぎて怖い。









左手に感じる愛おしい人の温もり。

右手に抱く幸せなもの。

金持ちだとかそういう世界中の贅沢なんていらないから。

たった2つ、欲しいものはそれだけなのに。









.

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作者名:はる | 作成日時:2018年3月3日 19時

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