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「ほら、早く行くよ。」
「ちょっと待って。」
「ったく、まだ靴紐結べないの？」
秋の夜。
薄く短いこの季節。
風磨の気に入っているスニーカーが、どうしても同じのが欲しくて。
誕生日プレゼントなにがいい？って、あんな素敵な事してくれたのに、聞いてくるから、素直に甘えて強請ったら、本当にくれた。
もう、甘やかされまくりだ。
「ふふ。」
「なに？」
「お揃いっていいね。初めての経験。」
「マジ？」
「マジ。」
ピアスに加えてスニーカー。
こうして一緒に生きていく上で、お揃いのものがこれから沢山増えていくんだね。
それって、ものすごく幸せじゃん。
「ねぇ、風磨。」
「ん？」
相変わらず大きくて優しくて温かい風磨の左手は、私の右手を包んでくれる。
「風磨はさ、私のために死ねる？」
「死ねない。」
ふざけて言ってるのかと思ったけど、割と真剣な顔で即答するから、ちょっと寂しい。
ヒーローになって、なんて言えないし、もちろん風磨が私のために死んじゃうなんてのは、絶対嫌だけれど。
「なんでよ。」
「俺が死んだらその後誰がAちゃんを守るの？幼馴染？それとも松島？そんなの絶対許さない。」
出た。
たまに出る、風磨の幼稚的とも言えるバカみたいな独占欲。
「だから俺たちは死なないんだよ。もしくは死ぬ時は一緒、ってやつ。」
「随分とメルヘンチックね。」
大げさに言うならば、そういうことなんだろう。
「Aちゃんは俺を選び続ければいいよ。俺もAちゃんを選び続けるから。そしたらずっと一緒だ。」
誇らしげに言うならば、きっとそういう感じなんだろう。
風磨は私をキュンキュンさせる天才なのか。
なんか、こういうの、初体験で、むず痒い。
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作者名：はる | 作成日時：2018年3月3日 19時
