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Kento
「でさー、もう、Aちゃんが可愛くってさー。」
「はいはい。よかったね。」
「マジで中島には感謝してる！ありがとう！」
散々渡辺さんの誕生日を祝った日の惚気を聞かされている。
分かったから。もう、これ以上俺の心を エ グ るな。
「でもさ、あの、中島の友達？の人にめっちゃ睨まれた気がするんだけど。」
「あー、アイツな。目付き悪いんだわ。」
「へぇ、そうなんだ。なら大丈夫か。」
あのレストランの店主・サトルは、俺の事情を知っている唯一の友人だ。
「まぁ、楽しかったならよかったじゃん。」
「おう！次のクリスマスはしっかり予定組むわ。」
「もう助けねぇからなぁ〜。」
正直、俺は風磨とは腐れ縁だなんて思ってない。
きっと、風磨はそう思っているのだろうけれど。
「お前さぁ、まだ幼馴染に言ってないの？」
「言える訳ねぇだろ。」
大学終わり、仕事が休みだというサトルを呼び出した。
サトルは、俺の3個上で、あるバーで出会ったから、下の名前しか知らない。
「早く言わないとしんどいぞ。」
「もう言っても手遅れなんだよ。アイツには彼女がいるんだ。」
俺は、百人に愛されようが、自分が愛して欲しいと思う人に愛されなければ、死んだ方がマシだと思う。
「ハナの事もハッキリさせろよ。アイツは本気だぞ。」
「あぁ。分かってる。」
"自分が愛する人か、自分を愛する人か、このどちらを選んだ方がいいのか。"
なんて、普遍的な二択がある。
まさに、愚問。ナンセンス。断然前者。前者以外ありえない。
ありえるはずもない。
「わっかんねぇな〜。」
「なにが？」
「何もかも全て。」
「ふっ、人生そんなもんだろ。」
テーブルに置いていた携帯が、着信を知らせた。
「おー、噂をすれば。」
「うるせぇ。」
電話の相手をテキトーにあしらい、テキトーに約束をして、切った。
「じゃ、行くわ。」
「おー。ちゃんとケジメつけろよー。」
「分かってる。何度も言わせるな。」
仕事以外テキトーな友達に、テキトーに金を渡して、テキトーな服装のまま向かった。
中途半端なテキトーさが、今の俺を表しているようで。
本格的に寒くなった冬の風が、やたらと冷たく感じた。
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作者名：はる | 作成日時：2018年3月3日 19時
