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「"Aの事はなんでも分かるよ。" って前に言ってくれてたよね。でも、聡は何にも見えてなかったと思うよ。それは、私もだけど。」
次は、ちゃんと聡の目を見て、伝えたかった。
「聡が帰らない真夜中、目を瞑ると聡の事を思い出して、段々気持ちが深く濃くなっていって、触れたい気持ちが増した。無い物ねだりをするように胸の奥がギュッと小さくなって、布団を抱きしめても落ち着かなくて。それでも連絡したら迷惑かなって考えて、結局そのままにして。疲れるのを待って、眠りに逃げたいと思っても眠れない日があった。」
そう私が言うと、聡は笑った。
「そんな事、思ってくれてたんだ。」
「ええ。とっても。毎日貴方の帰りを待ってた。」
「最初、菊池と付き合ったって聞いた時、かなり嫉妬した。」
次は、聡が話し出した。
「菊池って、あんな見た目なのに成績優秀だし、モテるし、菊池自体に妬いてたんだよ。俺には持ってないもの持ってるから。でも、菊池と並んで歩くAの笑顔を見て、やっぱ俺じゃダメだな〜って思った。あんな顔させてやれないなぁ〜って。笑っちゃったくらい。」
少し、泣きそうになった。
お互い、少し不器用だっただけなんだね。
「絶対、俺といた時より幸せになれよ。」
「うん。」
「これからは友達な。なんて大人気ないないから俺言えないわ。それくらいに、Aの事が好きだった。」
友達に戻ろうなんて、触れ合う前の新鮮さに憧れているだけ。
触れすぎたことに後悔しているだけ。
本当に好きだったら友達になんて戻れないもの。
そんなの、傷を深くしていくだけ。
「今まで、ありがとう。」
「こちらこそ。」
ただ時を重ねただけ。
他の人よりも少し長い時間を一緒にしただけ。
楽しい事が少し長く続いただけ。
...少し、好きだなって思ってただけ。
「楽しい未来が待ってるといいね。」
「そうだね。」
「お互いに、健闘を祈ろう。」
大学の入り口まで聡が送ってくれた。
2人で並んで歩くのは久しぶりで、なんだか少しむず痒かった。
最後に握手をして、私は、振り向かずに大学を後にした。
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作者名:はる | 作成日時:2018年3月3日 19時