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Shori
「A?大丈夫?」
「うん。勝利もういいから帰りなよ。」
「...はるのお母さんが帰ってきたら帰るよ。」
Aのいつもより熱い手を握り、そっとベッドの下に座った。
「早く良くなって菊池先輩とデートしてあげなよ。」
「ふふ、どうしたの?風磨の話するなんて。」
これは、精一杯の嫉妬と、自分への戒めの言葉だった。
何にも知らないくせして、どうしたの?なんて呑気に聞いてくんな。
「はぁ。早く風磨に会いたい。」
俺と繋いでいない方の手を額に乗せ、"早く下がれー" なんて力無く言ってる。
そうだね。早く治ればいいね。
なんて、俺は捻くれているから言葉には出せない。
「風磨が超いいレストラン予約してたの。」
「そうなんだ。」
「キャンセルしちゃったんだって。もったいない。」
「そうだね。でもまた次があるよ。」
「ふふ、そうだね。」
どうてなんだろう。
別に告白したわけでも、フラれたわけでもないのに。
その菊池先輩を思っての笑顔を見ると、俺の胸はなぜ苦しくなるんだ。
眠ってしまった彼女の寝顔を見ていると、不意に手がギュッと握られた。
ドキッとしたのも束の間、俺は下げられる事になる。
「ふうま...」
「...ははっ、」
あまりのバカさに思わずもう笑えた。
きっと俺へ向けての意味は何も持たないその仕草に、俺はまた振り回されたんだ。
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作者名:はる | 作成日時:2018年3月3日 19時