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「...はぁ〜。」
なにしてんだろ。
せっかく風磨が誕生日に。って連れてきてくれた場所なのに。
またひねくれて、可愛くない自分。
このままじゃ、いつ風磨に愛想尽かされるか、ハラハラしてしまう。
「よし。」
鏡に映る自分を見て、頰をペチンと1回叩いて、気合いを入れ直す。
「あ、Aちゃんおかえり。」
「た、ただいま。」
さっきの気まずさが嘘かのように、風磨は迎え入れてくれた。
「もうメイン来ちゃってるよ?冷めないうちに食べな。」
「うん。」
なんだかんだ言って、メインで運ばれて来たそのお肉が美味しくて、結局また気づけば色気の無い食べ方をしていたけれど。
前に座る風磨とふと目が合った時、風磨も幸せそうに笑っていてくれたから、なんだ、もういいや。って。
「お待たせしました。デザートでございます。」
スタッフさんが運んで来たのは、少し小さめの可愛いショートケーキ。
「ふふ。風磨がショートケーキ。」
「うるさいなぁ。」
なんてバカにしていると、私の前にもケーキが出された。
「えっ?」
「お誕生日おめでとう。Aちゃん。」
私の目の前に出されたケーキのプレートには、風磨より少し大きめのショートケーキと、"Happy 20th Birthday to Love you" と書かれていた。
「え、嘘...」
「ほんと。ごめんね、こんなベタな事しか出来なくて。」
そんな事ない。むしろ嬉しい。
「俺の憶測だけど、きっとAちゃんは店全体を使ったサプライズとかより、こういうプチサプライズの方が好きそうだから。あと、Aちゃんはショートケーキが好きだから。」
「うん...」
あぁ。もうなんで。
まだ半年も一緒に居ないのに、分かっちゃうの。
涙を堪えながら、無くなっていくケーキがもったいないと思いつつも、完食した。
お腹いっぱい食べて、幸せを沢山感じた。
お会計をしようと、財布を出すと、スタッフさんに断られた。
さっさと店を出る風磨に "お会計は?" って聞くと、"ここ、可愛い子連れてくるとタダなんだよね。" だって。
ねぇ、マリウスさん。
これじゃ、惚れ直すどころか、好きが溢れすぎておかしくなりそうだよ。
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作者名:はる | 作成日時:2018年3月3日 19時