065 ページ25
.
夜、さっきの豪雨は嘘かのように、綺麗な月と星が夜空に輝いていた。
風磨はベランダで煙草を吸っている。
禁煙するって言ったくせに。
それでも、ベランダの手すりにもたれかかり、スラっと長い脚と、煙草を挟む綺麗な指と、煙を吐く横顔は、どこか儚げだった。
少し肌寒くなってきたというのに、風磨はスウェットにロンTだなんて薄着だった。
風邪を引かれちゃ困るから、パーカーを持って外へ出た。
「Aちゃん?寒いんだから出ちゃダメでしょ。風邪引いちゃう。」
「それは風磨でしょ。」
寒いから出てきちゃダメだなんて、どこまで過保護なの。
私は、そんな女の子扱いに慣れてないから、やめて。
パーカーを渡すと、"サンキュ、" と短い返事が返ってきた。
あぁ、またそうやって煙草を咥えたままパーカー羽織るとことか、しれっと煙が流れない方に私を誘導したりとか、狡い。
「Aちゃんはさ、月とか星とか好きなの?」
「んー、微妙。」
「そうなの?ほら、女の子って夜景とか好きじゃん。」
「月とか星とか見てると、かわいそうになる。」
「かわいそう?」
ずっと遠くの街の光を見つめていた風磨が、私の顔を見た。
「あんなにも遠いとこからの光がこっちからは見えてるのに、自分自身は光ってることに気づかないんだよ?かわいそうじゃない。」
「...Aちゃんと一緒だね。」
「え?」
驚いて風磨の方に顔を向けると、風磨は優しく微笑んでいた。
「Aちゃんはさ、結構悲観的になる事が多いでしょ?それに秘密も多い。もちろん過去の事は無理に聞かないし、話したい時に話してくれればいい。でも、Aちゃんは過去にいるの?Aちゃんが居るのは今でしょ?元カレでもなく、幼馴染くんでもなく、俺でしょ?」
足元に置いていた灰皿に煙草を押さえつけて、またこちらを向いた。
「俺はAちゃんの事が好き。それは絶対。俺にとってAちゃんは星なの。自分の輝きに気付いてないなんてかわいそう。でもそれも含めて好き。俺だけがその輝きを知ってればいい。だってAちゃんはずっと俺の隣にいるから。絶対。」
「そんなの分かんないっ...」
グッと引き寄せられて、少し煙草の匂いが残る風磨に抱き寄せられた。
.
1859人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「菊池風磨」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はる(プロフ) - あらたさん» あらた様 うわー!本当ですね!すみませんご指摘ありがとうございます!これからも当作品をよろしくお願いいたします。 (2017年11月6日 2時) (レス) id: ab803b53a8 (このIDを非表示/違反報告)
あらた(プロフ) - 設定に変わってしまっているのかなと思います。なにか考えがあってでしたら申し訳ありません。これからも更新楽しみにしております! (2017年11月5日 4時) (レス) id: b48a22250f (このIDを非表示/違反報告)
あらた(プロフ) - こんばんは!初めまして。作者様の書かれるストーリーだけでなく、言葉や作品の雰囲気やリズムなど全部がツボです(;_;)作者様のお話が大好きです〜!それと私の間違いだったら申し訳ないのですが、68では主人公は夏生まれとなっていますが70では11月?あたりの→ (2017年11月5日 4時) (レス) id: b48a22250f (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - 未空さん» 未空様 もったいないお言葉をありがとうございます!これからもよろしくお願い致します。 (2017年10月26日 1時) (レス) id: ab803b53a8 (このIDを非表示/違反報告)
未空(プロフ) - 今1番好きな作品です!続き楽しみにしてます! (2017年10月24日 0時) (レス) id: 0d0a977df5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:はる | 作成日時:2017年9月13日 2時