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数十分後、アイツは戻ってきた。
戻ってきてくれてよかった、なんて安心してしまった。
「お待たせ。はい、これ。」
「なに?」
「え?なにって、ケーキ。タルトかショートケーキ、どっちがいい?」
「なんでケーキなの?」
「え、女の子って甘いもの好きでしょ?」
「ふっ、なにそれ、意味分かんないし(笑)」
思わず笑ってしまった私に、不服そうな顔をした。
「あ、笑った。」
「え?」
「ずーっと暗い顔してたから。まぁ、仕方ないけど。とりあえず、笑ってほしかったから。」
急に真面目な顔して言うから、こっちだってどんな顔したらいいのか分からない。
「Aちゃんには、笑顔が似合う。」
「うるさい。」
「あ、また不貞腐れた。」
座ったままブランケットに顔を埋めると、ひょいっとブランケットを奪われた。
「ほら、食べよ?女の子は甘いもの好きでしょ。」
「誰でもそうとは限らないでしょ。」
「あ、じゃあAちゃんはいらない?俺2個食べようかな?」
「うそ!いる!」
「ははっ、分かった分かった。どっちがいい?」
「...ショートケーキ。」
「ほら、やっぱ甘いものの方が好きなんじゃん。」
その優しく頭撫でるの、ずるいってば。
「コーヒー入れてくる。」
「ありがとう。」
2人分のコーヒーを淹れた後、戻るとアイツのケーキは半分以上無くなってて...
「あ!あたしのイチゴ!」
「ん?元からなかったよ。」
「嘘だ!絶対食べたでしょ!」
「バレた?」
「もう、最低。」
「ははっ、本当に可愛いなぁ。」
こう見えて私は好きなものは最後に残しておく派なんだから。
食べ物の恨みは怖いのよ。
そういえば勇樹はチーズケーキが好きだったっけ。
女みたい!ってお姉ちゃんにバカにされてたっけ。
「なに?なんか思い出した?」
「え?」
「泣いてるから。」
そう言って、また私の頬を伝う涙を拭う。
「チーズケーキ、好きだったなぁ。って。」
「うん。」
「唐揚げとか、ハンバーグとか、ご飯類は男の子っぽいのが好きだったのに、デザートは絶対チーズケーキだったの。」
「うん。」
出来ることなら、思い出したくない。
何気ない事が、こんなにも幸せだったのね。
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はる(プロフ) - あらたさん» あらた様 うわー!本当ですね!すみませんご指摘ありがとうございます!これからも当作品をよろしくお願いいたします。 (2017年11月6日 2時) (レス) id: ab803b53a8 (このIDを非表示/違反報告)
あらた(プロフ) - 設定に変わってしまっているのかなと思います。なにか考えがあってでしたら申し訳ありません。これからも更新楽しみにしております! (2017年11月5日 4時) (レス) id: b48a22250f (このIDを非表示/違反報告)
あらた(プロフ) - こんばんは!初めまして。作者様の書かれるストーリーだけでなく、言葉や作品の雰囲気やリズムなど全部がツボです(;_;)作者様のお話が大好きです〜!それと私の間違いだったら申し訳ないのですが、68では主人公は夏生まれとなっていますが70では11月?あたりの→ (2017年11月5日 4時) (レス) id: b48a22250f (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - 未空さん» 未空様 もったいないお言葉をありがとうございます!これからもよろしくお願い致します。 (2017年10月26日 1時) (レス) id: ab803b53a8 (このIDを非表示/違反報告)
未空(プロフ) - 今1番好きな作品です!続き楽しみにしてます! (2017年10月24日 0時) (レス) id: 0d0a977df5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はる | 作成日時:2017年9月13日 2時