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灯りなんてほとんどない暗い部屋。
四方八方を襖に囲まれた圧迫感のある部屋で独り。
この部屋にあるのは、高価そうなふかふかな布団と、ひび割れた大きな鏡台と、その前に置かれた紅やら、白粉やらの化粧道具。
そして、部屋のいたるところに置かれた椿の花。
きっと化粧道具も高価な良い物なのだろう。
でも、誰とも会わないこの牢獄のような部屋で化粧などして何の意味があるのだろうか。
鏡もいらない。
自分の身体の奥底が渦巻く違和感に、何となく鏡に向かえば、自分が鬼になったことを思い出した。
鮮血のような真っ赤な瞳。
瞳孔は猫のように縦筋になっていた。
口を開けば、犬歯が伸び、鋭い歯がきらりと光った。
爪は長く、鋭く。
自慢だった黒髪も、毛先の方が椿色になっていた。
気づけば、鏡を叩き割っていた。
私には醜いとしか思えない、鬼の姿。
私は人間だった。
生まれてからずっと人間として生きてきた。
ヒトを喰らい、生きる鬼。
私は神社で巫女をしてきた家系だったので、鬼の知識はなんとなくあった。
そうだ。あの時だ。
私は鬼舞辻無惨に鬼へと変えられたのだ。
そうか、身体の中で渦巻くあの違和感は、憎悪の気持ちだったのか。
鏡には大きくひびが入り、小さな鏡の破片がそこら中に散らばった。
でも、手は痛くなかった。
破片が刺さり、血は流れるはずだった。
叩いた手は、傷一つなく、血など流れず、痛みの一つさえなかった。
自分が鬼となったのだと改めて理解した。
神を祀る家系から鬼となってしまったなんて、先祖に顔向け出来ない。
一人で過ごすには豪華すぎる、金の物で輝く部屋に独り、椿に囲まれて過ごす。
する事もなく、ただただ時間が流れた。
陽も差さないこの部屋で、何日が経ったのか、今は何月の何日なのか、何曜日なのか、何時なのか。
もはやわからない。
なんならもう、陽の下に降りて、灰になって消えてしまいたい。
もう枯れたのか、涙の一粒さえ出なくなった。
生きた屍。
今の私を言葉で表すなら、それが一番合うだろう。
その時だった。
無「椿、具合はどうだ?」
憎む相手が目の前に現れたのは。
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HARu(プロフ) - Ωさん» 申し訳ございませんが、現在リクエストは受け付けておりません…。リクエストは受け付けられませんが、今後もよろしければこの作品を読んで頂けると嬉しいです! (2020年5月9日 20時) (レス) id: d53301ec48 (このIDを非表示/違反報告)
みるく餅(プロフ) - Ωさん» まずリクエスト受け付けて頂けるか聞くのが先ではありませんか? (2020年5月9日 20時) (レス) id: bf52b07c83 (このIDを非表示/違反報告)
Ω - 鬼舞辻無惨様が夢主を溺愛してる話と鬼舞辻無惨様が夢主の信者みたいになって夢主の言う事だけは聞く話見たいです他の鬼殺隊や鬼達には原作通りで無惨様は日光も克服してる少量の血を飲むだけで良い設定で (2020年5月9日 20時) (レス) id: 421640d4d1 (このIDを非表示/違反報告)
HARu(プロフ) - 神楽 林檎さん» 神楽さん!ありがとうございます!私のいろんな作品にコメントしてくださっていますよね?本当にありがとうございます!中々更新頻度が少なく申し訳ございません。高頻度で更新できるように頑張ります!今後もよろしくお願いします! (2020年5月9日 1時) (レス) id: d53301ec48 (このIDを非表示/違反報告)
神楽 林檎 - 更新頑張って下さい!応援してます!! (2020年5月8日 21時) (レス) id: a7e0927490 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:HARu | 作成日時:2019年12月30日 23時