秘すれば花であるならば ページ30
××
彼女は、そこに立っていた。
白い睫毛を揺らしながら、周囲の視線も気にせず、大広間に入っていくたくさんの生徒のネクタイの柄を確認しているようだった。いつものようにクラップとゴイルを引き連れたドラコはそんな彼女を指差して笑うと、嫌味のひとつでも投げ掛けてやろうと口を開く。
「───」
シェリーの瞳が、ドラコを捉える。
白い髪がふわりと揺れて、ドラコに近づいて来る。
恐ろしく整ったその顔は、ドラコから言葉を奪った。
「───な、なんだ」
ドラコが身構えれば、シェリーは真っ直ぐとドラコを見据え、そして驚いたことに頭を下げた。
「ごめんなさい」
ホグワーツ特急でのこと、とシェリーが付け加え、ドラコは列車の中でシェリーに魔法をかけられたことを思い出す。それでも何故今、彼女が謝ったのか全く分からなかったが───シェリーが罪悪感を感じているのは確かだった。
「おまえ、僕に許してほしいのか？」
今日はこれ以上ないくらい喜ばしい日だとドラコはニヤニヤと笑う。シェリーがドラコに負い目を感じているならばこれほどまでに
「これから僕が言ったことは何でも聞く。
僕が呼び出したら三分で来る。良いな？」
「……つまり、私に召し使いになれってこと？」
シェリーの赤い瞳が冷えたように鋭くなる。
ゾクリ、とドラコは一瞬だけ怯んだが彼女はもうドラコに魔法をかけることはない以上、立場的にはドラコの方が上。
「期限は永久に……と言いたいところだが、今年一年だけで良い」
今年一年。つまり夏休みが始まるまで、ということだ。それでも長すぎるが───そう、歩み寄り、だ。ドラコは子供で自分は大人。自分から歩み寄らなくてはいけない。無理に自分を納得させたシェリーは条件を飲み込んだ。
▽
シェリーがドラコの専属召使いのようになったという噂は瞬く間にホグワーツ中に広まった。ドラコが呼び出せば三分で駆けつけ、あれが読みたいと言ったらすぐに図書室から借りてくる。同じグリフィンドール生からは白い目で見られていたが、ハリーやロン、そしてハーマイオニーは「何か弱味を握られてるに違いない」とシェリーをひどく心配していた。
「ねえ、本当に大丈夫なの？僕ら、シェリーが心配でたまらないよ」
「ありがとう、ロン。でも大丈夫よ。
駄々っ子の家庭教師だと思えば……」
それに、ドラコのワガママや暴君発言なんて子供らしくて可愛いものだ。
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好き - めっちゃ面白いです！！質問ですが、クララさんは「リミット」の主人公という解釈であっていますか？ (9月11日 22時) (
レス) @page50 id: 7b1f7a885b (このIDを非表示/違反報告)
カケオレ(プロフ) - すみません。アドラーというのは本作に出てきますでしょうか。調べても出てこなくて… (8月24日 9時) (レス) @page49 id: 1b32a494c8 (このIDを非表示/違反報告)
本都 - 失礼します。クララの子供はレギュラスの子供でしょうか (2021年8月15日 13時) (レス) id: 7aa513530e (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 柊あんずさん» どんな更新速度でも完結まで追い続けます！応援してます！ (2020年10月24日 0時) (レス) id: 05ebd46207 (このIDを非表示/違反報告)
柊あんず(プロフ) - mikittyさん» コメントありがとうございます〜！今までが遅すぎたんですよ…だってこれ連載したの2018年ですからね…申し訳ない…これからも応援よろしくお願いいたします…！ (2020年10月23日 21時) (レス) id: 30d83766f8 (このIDを非表示/違反報告)
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