初めての恋は少し苦い ページ12
××
「……いくらアドラー家にグレース・アドラーがいようと、お前は混血の孤児院育ち。それは変わらない。そしてブラック家は純血一家だ。俺は違うけど、弟も純血主義だ。どう頑張ってもお前なんか相手にされない」
「……そうかもしれない。だけど、それと私が彼のことが好きだっていうのとは別問題だわ。レギュラスが純血主義だろうがなんだろうが、私は今、彼のことが好きなんだもん」
「……想いが返ってこなくても？」
「両想いになりたくて、恋しているわけじゃないもの」
見つめているだけで幸せだと、満足だと思える恋だってある。
「想うだけで幸せってこともあるのよ」
私がそう言えばシリウスは切なげに顔を歪めた。
そして私とろくに目も合わせずに図書室から去って行く。シリウスがどうしてそんな顔をしたのか分からなくて、暫くそこに立ち尽くしていたとき、背後に気配を感じた。
「……っ、だれ？」
「……」
気まずそうに出てきたのは、レギュラスだった。その表情からわかる。彼は一部始終を聞いていたのだと。あーあ、こんなに早くバレるなんてな、と涙を堪えるために天井を仰いだ。
「……あのね。さっき言ったこと、事実よ」
「……」
「初めてあなたを見たときから、あなたのことが好きです」
心からの笑顔を見せても、レギュラスは私から視線を逸らすだけだった。困らせたいわけではなかったし、そんな顔させたいわけでもなかったからただただ申し訳なく思う。
「……ごめんなさい」
「───初めてあなたに恋をしたとき、本当に世界が変わって見えたの。胸が苦しくなって、でもすごく暖かくなった。レギュラスは私をこんなにも幸せな気持ちにしてくれたのよ。だから謝らないで」
いまだって、心臓は爆発しそうなくらい高鳴っていて、同時にすごく幸せだ。彼と話しているだけで私はたまらなく幸せだ。だから、自然と私は笑顔になっていた。
「───恋を教えてくれてありがとう！」
▽
恋を教えてくれて、ありがとう。
クララがそう言ったとき、レギュラスはクララが何を言っているのか全く分からなくて、理解するのに二分の時間を要した。恋を教えてくれてありがとう。たった今、失恋した彼女は太陽そのものみたいな笑顔を顔いっぱいに咲かせたのだ。
彼女のことが好きだと思った。
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や(プロフ) - とても面白かったです……。主人公ちゃんとロックハート、クィレルとの絡みとかめちゃめちゃ良かったです！素敵な作品ありがとうございました！ (2022年3月20日 20時) (
レス) id: b5a009288d (このIDを非表示/違反報告)
ぴ - 初めまして。とっても面白くて大好きな作品です。応援しています！一つだけ気になったのですが、OWA試験ではなくOWL試験ですよ！ (2021年9月10日 14時) (レス) id: dbaf625547 (このIDを非表示/違反報告)
柊あんず(プロフ) - mikittyさん» 更新してすぐにコメントくださりありがとうございます！mikitty様は一番最初にコメントしてくださった時からずっと応援してくださっていて本当に感謝しかありません…！リセットの方でも宜しくお願いいたします！ (2021年9月9日 1時) (レス) id: 69139934db (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 完結おめでとうございます！！「リセット」期待しています！ (2021年9月9日 1時) (レス) id: 75972ecbb8 (このIDを非表示/違反報告)
柊あんず(プロフ) - 本都さん» コメント返信遅くなってしまい申し訳ありません…全部大好き、って最高に嬉しい言葉だなと思いました…本当にありがとうございます！こちらの作品はもうすぐ完結しますので最後まで宜しくお願いいたします！ (2021年9月8日 22時) (レス) id: 69139934db (このIDを非表示/違反報告)
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