第十二話「覆い隠して」 ページ10
動き回る肖像画で怪我をする人を見て、私は他人事に思うよりももっと酷い、歓喜の感情を抱いた。そして、それ以上に傷つくことを心の底から願ったのだ。
そのことを思い出すと同時に背筋に冷たいものが走り、リヴィは顔を歪めた。悲鳴をあげそうになり口をぱっと押さえるが、恐怖に染まりきった声は隙間から零れ出た。
「あ、あ……ッ」
――そのうち、私は私を苦しめる人は誰でも傷ついていいと思ってしまうのではないか。そしてさっきみたいに魔法を使ってしまうのではないか。これでは、みぞの鏡を見て笑ったときの感情と同じになる。
……嫌だ。違う。
「どうしました！」
声を聞きつけたのか、マダム・ポンフリーが走ってきた。
リヴィはそちらを見たが、その目は怯えに満ちており、どこにも焦点が合っていない。マダム・ポンフリーの声は聞こえていないようで、小さな声で同じ言葉を繰り返した。その様子は、何かに憑かれているように見えた。
「違う、違う違う……違う」
私は違う。みぞの鏡に映った両親みたいに酷い人にはならない。なってはならない。なりたくない。そうだ……私はなりたくない。だから、大丈夫。
そうやって「違う」と呟くリヴィは、妄執にも似た思いを持っていた。だけれどその思いを知ってしまったら、両親と同じだがそれを隠している、と認めることになる。それゆえにリヴィは、認めろと心のどこかで叫ぶ感情を振り払って逃げ出そうとした。
しかしまた逃げるのかという言葉が纏わりつき、耳から離れてくれなかった。むしろ大きく響いてくるようで、無意味だと分かっていても聞きたくなくて耳を塞いだ。
(知りたくないし分かりたくもない)
これでいい。これで。
両親に怯えるだけの、いつもに戻る。
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蒼(プロフ) - eryさん» ずっと更新が止まっているのにコメントありがとうございます。いつになるかは分かりませんが、投稿したらよろしくお願いします。 (2019年3月3日 23時) (
レス) id: 5cd05e93e8 (このIDを非表示/違反報告)
ery(プロフ) - ゆっくりでいいので更新頑張ってください！ (2019年2月21日 14時) (レス) id: b4108c4e9e (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - 蓮さん» 今日更新したいと思います。遅くなってしまい、すみません。 (2018年2月16日 18時) (レス) id: 8bca99ae07 (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - 碧さん» 第十一話は重要だと思っていて、他の話以上に気をつけて文章を書いていました。なのでそんな風に言ってもらえて本当に舞い上がりそうです！ありがとうございます！頑張ります。 (2018年2月2日 21時) (レス) id: d4697bad1b (このIDを非表示/違反報告)
碧(プロフ) - とっても良かったです。今までにない感じでひきこまれました。第十一話が好きです。これからも頑張ってください、応援しています。 (2018年2月1日 1時) (レス) id: 434e08913c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蓮 | 作成日時：2017年5月14日 23時
