第二十五話 ページ27
ーー北川第一
彼等にとっても訪れるのは久しぶりだろうか。
ここにいるメンバーの半分以上はここで育ち、育てられてきた。
懐かしさを込めた思いは一瞬で砕かれた。
「予想以上だわこれ」
彼等の目に映ったのは予想よりも酷く壊れていた校舎だった。
上から何かが落ちてきたような壊れ方でなく、内側から破壊されたような形跡だ。
グラウンドには大量の瓦礫が散らばっている。彼等はその瓦礫を避けながら下駄箱に向かって歩み始める。
瓦礫に赤い液体が付いてるのに気付いたAは咄嗟に目線をずらす。
「とりあえず、星翔ちゃんの靴見てからどうするか考えようか。」
「分かった。見てくる。」
中三用の下駄箱に辿り着くまで数分しかかからなかった。
及川が彼女にそう言うと、彼女はコクリと首を縦に振り、急ぎ足で星翔の下駄箱を探しに行った。
ーー
「桐崎……桐崎……。」
一クラス三十人位居るため、一つ一つ名前を覗くしか無かった。
それでもAは弱音すらも吐かずに必死に自分の苗字を呟きながらにらめっこし続ける。
探し始めて数分。彼女はやっと星翔の靴箱を見つけた。
「……上靴のまま。」
汚れが全く無く、とても真っ白な上靴に桐崎と書かれていた。
Aはそれを見た途端、ホッと胸をなで下ろした。あの無残な姿をした校舎の中に居ないと知っただけでも彼女に一筋の希望を与える結果になった。
その事を報告しようと彼等の元に戻ろうとする瞬間、及川の叫び声が聞こえた。
「逃げろ!!」
その瞬間轟音が響き、暴風が彼女に襲いかかった。
一瞬の事だったため、Aは強く吹いてくる風に吹き飛ばされるだけだった。
廊下まで吹き飛ばされ、壁に頭を強く打った。
(あ……かい。)
そこから記憶は真っ白にーー。
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作者名:名無し琲世 | 作成日時:2017年7月26日 21時