検索窓
今日:6 hit、昨日:0 hit、合計:31,040 hit

第一話 ページ3

「あー!くっやしー!」

街灯に照らされた夜道を歩く三人の姿。
及川、岩泉、それからAだ。

「いーや、Aが言えるセリフじゃないね!」

「なんで?!私は選手じゃないけど、三年間ずっとマネージャーやってきたんだよ?!二人のプレイも長く見てきたんだよ?!」

「そーだけどさ!すっげー悔しいの俺と岩ちゃんだからね!」

春高の宮城県代表決定戦で烏野高校に敗れた彼等。
悔しいのは当然だろう。
言い合いになっている二人を呆れながら岩泉は深い溜息を吐く。

「もう終わった事だし、何回も同じこと言い合ってんだよ……。」

「だってさー!いっちゃんも悔しいでしょ?ワンチャン勝てたんだよ?!決勝行けたかもなんだよ!」

ぎゃーぎゃー騒ぐAに対して岩泉は「はいはい」と塩対応をする。
Aは悔しそうにうーっと声を唸らせその場で立ち止まった。手に持っていた鞄もそれと同時に地面に落とし、俯いた。
歩いていた二人もそれに連られて立ち止まる。

「何立ち止まってんだ。もう暗いから早く帰るべ。」

「ねえ。いっちゃん。とーる。」

Aは更に俯き、音を殺すような声で二人のあだ名を呼ぶ。
二人は不思議そうな顔をし、Aをじっと見つめる。

「わだし、は、るこう、いぎだかっ、たッ!!」

堪えていたのか、涙が溢れ、ぶわーっと泣き出した。
二人は苦笑いをし、Aの頭を撫でた。

「俺も行きたかったよ。一度はね。」

「ああ。俺もだ。泣くなA。」

Aは泣き止まらない涙を拭いながら二人に飛び付いた。
静かな夜道に彼女の泣き声だけが響いた。
その様子を眺めていたのは二人と、月とーー。

それから、数日後。
高校三年生達は引退し、卒業を待つ日々が続いた。

第二話→←登場人物



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (45 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
41人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:名無し琲世 | 作成日時:2017年7月26日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。