第一話 ページ3
「あー!くっやしー!」
街灯に照らされた夜道を歩く三人の姿。
及川、岩泉、それからAだ。
「いーや、Aが言えるセリフじゃないね!」
「なんで?!私は選手じゃないけど、三年間ずっとマネージャーやってきたんだよ?!二人のプレイも長く見てきたんだよ?!」
「そーだけどさ!すっげー悔しいの俺と岩ちゃんだからね!」
春高の宮城県代表決定戦で烏野高校に敗れた彼等。
悔しいのは当然だろう。
言い合いになっている二人を呆れながら岩泉は深い溜息を吐く。
「もう終わった事だし、何回も同じこと言い合ってんだよ……。」
「だってさー!いっちゃんも悔しいでしょ?ワンチャン勝てたんだよ?!決勝行けたかもなんだよ!」
ぎゃーぎゃー騒ぐAに対して岩泉は「はいはい」と塩対応をする。
Aは悔しそうにうーっと声を唸らせその場で立ち止まった。手に持っていた鞄もそれと同時に地面に落とし、俯いた。
歩いていた二人もそれに連られて立ち止まる。
「何立ち止まってんだ。もう暗いから早く帰るべ。」
「ねえ。いっちゃん。とーる。」
Aは更に俯き、音を殺すような声で二人のあだ名を呼ぶ。
二人は不思議そうな顔をし、Aをじっと見つめる。
「わだし、は、るこう、いぎだかっ、たッ!!」
堪えていたのか、涙が溢れ、ぶわーっと泣き出した。
二人は苦笑いをし、Aの頭を撫でた。
「俺も行きたかったよ。一度はね。」
「ああ。俺もだ。泣くなA。」
Aは泣き止まらない涙を拭いながら二人に飛び付いた。
静かな夜道に彼女の泣き声だけが響いた。
その様子を眺めていたのは二人と、月とーー。
それから、数日後。
高校三年生達は引退し、卒業を待つ日々が続いた。
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作者名:名無し琲世 | 作成日時:2017年7月26日 21時