けじめ ページ49
、
「ーーー…Aさん、」
「沖田、くん、」
だから、今目の前にいる彼から目をそらしたらいけなかった。
少し苦しそうに私の名前を呼ぶ彼の表情がそれを許さなくて、私は何にも気づいていないふりをしようと思った。
彼が言わんとしていることが必然的に分かってしまって、これだから困るのに、だなんて。
「あけましておめでとう」
「…おめでとうごぜェやす」
彼が口を開く前に挨拶をすれば彼は驚いた顔をした後に微笑をたたえてそう返してくれた。
彼はいい人だ。
私は歳下歳上、そんなの恋愛には持ち込まない主義。彼がなんだかんだ言って真っ直ぐな人なのは十二分に分かってるし、彼と付き合う人は幸せなんだろうな、と思う。
だけど、
「ーーー…今日はふられにきました」
「私、他に気になっている人がいるの」
あの人を知ってしまった以上、あの人と出会ってしまった以上、無視することができなくて。
だから、
「ごめんなさい、沖田くん。
私、沖田くんとはお付き合いできません」
彼の気持ちを踏みにじってでも、あのすこぶる怖い女性社員たちを敵に回してでも、私は叶えたいことがある。
「分かってまさァ」
こんな時にでも笑ってくれる彼の優しさに触れて、私は新たな年を迎える。
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Hanavi(プロフ) - ありがとうございます!!!! (2019年4月30日 22時) (レス) id: 5a9b3d8683 (このIDを非表示/違反報告)
刹那(プロフ) - めっちゃ面白いです、これからも更新頑張ってください! (2019年4月30日 16時) (レス) id: 9b87fec193 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Hanavi | 作成日時:2019年2月11日 18時